自信取り戻した香川真司 ベルギーは「必ず崩せる」
日本代表の中に、自分のチームに加えたい選手はいるか――。 ベルギー代表の指揮官、マルク・ビルモッツが挙げたのは、本田圭佑でも、長友佑都でもなく、香川真司だった。 「ひとり選ぶとするならカガワだ。ドルトムント時代から注目しているが、素晴らしいプレーをしている」 【写真】ザックJがイタリアに善戦した理由 敵将から送られた最大級の賛辞。だがそれは、裏を返せば、最も警戒され、厳しいマークに遭うことを意味していた。アフリカ系の黒人選手もメンバーに加わるベルギー代表は、フィジカルを前面に押し出して勝負する、日本代表が最も苦手なタイプのチームである。身長185センチを超す大男たちに囲まれることも予想されるが、今の香川には、それでも「必ず崩せる」という確信があるようだ。 「ベルギーのフィジカルの強さというのは先日のコロンビア戦でも随所に見えましたけど、それは上のレベルに行けば必ず厳しくなるものだし、自分一人でプレーするわけでもない。チームとして連動していければ必ず崩せるはずだから、やり続けることが重要になる」 チームとしての狙いは「裏」。自分自身はサイドに張ったり、中央に潜り込んだりしてメリハリを付けながら――。プレーと崩しのイメージは明確で、言葉には力強さがある。コンディション不良と試合勘の衰えに思い悩んでいたのはすでに過去の話だ。頼れる男が日本代表に帰ってきた。 香川が苦悩の中にいたのは、わずか1か月前のことである。 今シーズン、モイーズ新監督を迎えたマンチェスター・Uでベンチを温める日々が続き、コンディション調整がままならず、次第に試合勘を失っていく。それが現実のこととして突きつけられたのがセルビア、ベラルーシと対戦した10月の東欧遠征だった。 トラップの巧さと繊細なタッチに定評のある男がワンタッチ目を大きく弾ませてしまう。ドリブルで仕掛けても、ボールが足につかないから、簡単にボールを引っ掛けられる。 「やっぱり試合に出なきゃいけないってことをこの2試合で改めて感じた。コンディションもそうだし、試合勘は公式戦に出てこそ感じられるものだと思う。この2試合は雰囲気にすごく飲まれていたというか、試合にうまく入れなかったのは事実だと思う」 2試合を戦い終えた香川は、動揺を隠せずにいた。だが、10月23日を境に、状況は一変する。チャンピオンズリーグのレアル・ソシエダ戦で今シーズン初めてフル出場して監督の評価を高めると、以降、公式戦5試合のうち4試合に出場。11月5日のレアル・ソシエダ戦では左サイドハーフとトップ下の両ポジションを務め、いずれも高いレベルのプレーを披露した。