【アフリカ支援で優位を図る中国】債務問題、経済停滞でも、協力強化を図るそれぞれの事情
さらに、中国が人的交流や特に指導者育成に重点を置いている点も見過ごせない。協力分野10項目の最初が、相互学習のためのパートナーシップであり、特にガバナンスの経験の交流を重視し、政党関係者1000人を招待して党と国家のガバナンスに関する経験を交換するのだという。 タンザニアでは、22年に中国の寄付で設立された指導者養成学校で近隣国から参加する若い指導者を含め研修しているが、講師は中国共産党中央校の教授等であるという。そこでは、中国が如何にアフリカの独立や人種差別撤廃に貢献したか、欧米からは学ぶべきものはなく、経済発展の中国モデルがいかに優れているかを教えているという。 南アのアフリカ民族会議(ANC)も中国共産党中央校をモデルにした組織を設立し、人的交流が行われていて、ケニアの主要政党にもそのような提案が行われている由である。 しかし、このような中国のアフリカ重視政策が、債務の削減や再編インフラへの融資の継続、貿易不均衡の是正、輸出品の加工度の向上、アフリカ側が重視する製造業分野への投資といったアフリカ側の注文に沿った成果を上げるか否かには疑問がある。いずれも中国の自国利益優先の政策と両立しない面が多いように思える。
日本がすべきこと
西側諸国としては、まず、昨年の広島サミット宣言で重要鉱物のサプライチェーンに起因する経済および安全保障上のリスクを管理する必要性を強調したように、アフリカの重要鉱物資源の確保のための連携や協力が重要である。 他方、中国がアフリカ側の注文にすべて応ずることはできないだろうから、欧米や日本としては常にアフリカ側のニーズに応じて選択肢を提示することが重要であろう。人的交流や人材育成についても注力すべきだろう。特に欧州は旧宗主国的な意識を捨て、また米国は冷戦的発想に固執せずにアフリカ側と対等な立場で対話する姿勢と努力が必要であろう。 日本もODAは重要でアフリカ向けに拡大の必要はあるが、それとは別に投資を通じた支援を一層重要視すべきである。投資のリスクをカバーするだけではなく、国策として開発効果を推進するようなプロジェクトを積極的に支援する発想も必要なのではないだろうか。
岡崎研究所