宮城の珍味ホヤ 、復興は「韓国頼み」の現実
「海のパイナップル」と呼ばれ、東北で人気の珍味ホヤは、宮城県が全国9割の大生産地だが、東日本大震災の津波で養殖施設が全滅した。韓国向け輸出が震災前まで急増し、復興も「韓国頼み」なのが現実だ。危機感を抱き、国内市場拡大を目指す動きも出てきた。
グロテスクだが味わい深い
ホヤは見た目はグロテスクな、魚でも貝でもない「動物」。身が鮮やかな山吹色で、形が似ているため「海のパイナップル」と呼ばれる。酒や水を飲みながら食べると、甘みが広がる味わいがある。 5月下旬、宮城県石巻市の鮫浦湾を訪ねた。この湾はホヤ生育の環境に適し、養殖の種苗生産地として県内外にホヤ種を供給してきた。しかし、津波で養殖施設は全滅した。 鮫浦湾の前網浜では、養殖いかだが再建され、海面に長さ約100メートルのロープが張られた。約50センチ間隔で、深さ15メートルまでロープが垂れ下がり、1つのロープから約1000個のホヤがとれる見通し。来年、実が成長する3年目となり、「フジの花が咲く頃」といわれる夏に出荷される。 水揚げ金額は、ほかの魚貝類と比べて大きくない。しかし漁師は「養殖資材が安く、堅実に収入を得られるのが魅力」と話す。
韓国への輸出が急増
韓国では釜山を中心に、コチュジャン(唐辛子みそ)と食べるホヤの刺し身が大人気。養殖期間が短い韓国産に比べ、日本産は大きくて味も良いため、韓国バイヤーが近年こぞって買い付けにきた。財務省統計によると、韓国への輸出は05年の280トンが10年は728トンと、2.6倍に増えた。輸出はほぼ韓国向けだ。 前網浜の漁師は「韓国に向かう12トントラックがずらっと、この小さな浜で出荷を待つ。漁師はみな、韓国人業者と取引している」という。加工の手間が少ないことも魅力だ。国内向けでは数や大きさをそろえる作業が必要だが、韓国へはそのままごっそり持っていくという。一方で、漁師の鈴木健之さん(46)は「身が入っていない冬でも買って行くので、旬がなくなった」と話す。