杉咲花、志尊淳主演「52ヘルツのクジラたち」顔がグズグズになるくらい泣いた! 原作を完璧に再現した映画版 あえての改変シーンの理由を考察
推しが演じるあの役は、原作ではどんなふうに描かれてる? ドラマや映画の原作小説を紹介するこのコラム、今回は泣きすぎて化粧とマスクがグズグズになった、この映画だ!
■杉咲花、志尊淳・主演! 「52ヘルツのクジラたち」(GAGA・2024)
いや泣いたわ。映画が終わってしばらく目の焦点が合わなくなったくらい泣いたわ。原作は知っていたので「これ絶対泣くよなあ」とは思っていたが、まんまと泣いたわ。ただそれは、かわいそうとか感情移入とかではなく、「なぜこんなことが起きてしまうのか」という歯痒さの涙だったように思う。そしてその思いは原作を読んだときとまるで同じだった。 原作は町田そのこの同名小説『52ヘルツのクジラたち』(中公文庫)。物語の舞台は大分県の海辺の町。東京から越してきて一人暮らしをしている三島貴瑚が主人公だ。ある日、貴瑚は薄汚れた服を着たひとりの少年と出会う。この子が親に虐待されていることに気づいた貴瑚は、彼を守りたいと思った。なぜなら貴瑚もまた、虐待サバイバーだったから。 物語はここから、貴瑚の過去と現在が交互に描かれる。親が倒れてからはひとりでの介護を強制されて精神が限界まで追い詰められた貴瑚を救ったのは、高校時代の親友の美晴と、彼女の知り合いの岡田安吾、通称アンさんだった。アンさんは貴瑚にさまざまなことを教え、支えとなってくれた人物だ。しかしそのアンさんはもういない……。 というのが原作の導入部である。なぜアンさんがいなくなったのか、なぜ貴瑚はひとりで大分県に引っ越してきたのか、というあたりは徐々に語られるのでここでは言わないでおく。虐待、ヤングケアラー、DV、そしてここには書けないあることなどなど、辛い要素がメガ盛りだが、それでも間違いなく本書は希望の物語である。 そんな小説そのままの世界がスクリーンで再現されていた。原作と映画を比べると、もちろんカットされた部分はあったし、「敢えて変えてきたんだろうな」と思われる改変も少しだがあった。だがそれを踏まえてなお、これは間違いなく『52ヘルツのクジラたち』だと思わせる完璧な再現度だった。