ステーブルコイン、飛躍の年となるか? 超えるべき大きなハードルとは──河合健弁護士【2024年始特集】
世界から取り残されないために
──2024年はステーブルコインが登場、とCoinDesk JAPANも期待を込めて書いてますが、ビジネスとして離陸していくのは徐々にという感じでしょうか。 河合:そうですね。ただ皆さん、先んじて手がけたいと考えています。早く動いた方がドミナントを確立しやすいという感覚を持っています。とはいえ、当局との協議やライセンス取得には時間がかかりますし、発行にあたってのシステム構築も重たい作業で、十分な安全性を確保しなければなりません。その他、制裁対象者に対して送金される可能性があるときには、凍結できるような仕組みも必要になります。 ──ステーブルコインに関する規制の整備には時間もかかり、多くの作業が必要だったと思います。そのモチベーションは、どういうところから生まれていったのですか? 河合:ステーブルコインを日本に導入する必要があるという議論は、かなり以前からありました。海外では決済手段として利用され、優位性が非常に高いことが証明されていて、2018年、19年頃から相談を受け、議論を行っていました。 パブリックブロックチェーンを使い、事業者のところではKYCを行いますが、基本的には自由に動かせるものでないとマーケットニーズがないこともわかっていて、それを実現するためには新しい法制が必要だとJCBA(日本暗号資産ビジネス協会)のステーブルコイン部会でずっと議論していました。ブロックチェーンを活用した金融、あるいは金融に限った話ではありませんが、そうした世界を考えたときに、このままでは日本は取り残されてしまうという強い危機感からです。ともに活動する仲間がいたことも大きいと思います。いろいろな業界に関わっていますが、皆さん、圧倒的な熱意で取り組んでいました。 あとは前進できるチャンスだったことは大きいです。これが2019年だったら諦めていたかもしれません。当時は業界に対して完全に逆風が吹いていて、当局とは交渉の余地がほぼないような状況でした。今回はステーブルコインビジネスを進めたい人たちがいて、自民党web3PTのあと押しもあり、さらには伝統的な金融機関も参入を考えていた。そうした動きが集結したと思います。 ──ステーブルコインの規制整備をもとに、2024年はどんな動きがあると期待されますか。 河合:トークンを使ったビジネスが今、花咲こうとしている段階なので、多くのユースケースが出てきてほしいです。例えば、ブロックチェーンゲームや交換業者と通信業者のコラボレーションなど、2023年に素地は整ったので、実際に花が咲き、実を結んでほしいと思います。もちろん一番大きいのは、ステーブルコインを使った決済が実際に始まり、健全な競争の中で育っていくことを実感したいですね。 あとはWeb3ビジネスがより前に進むように、グレーゾーンとして残っている領域の明確化を進めたり、暗号資産交換業にも仲介法制がある方が望ましいと思っているので、金融商品仲介業や銀行代理業と同じような仲介法制を実現したいと考えています。仲介法制があると、エンベデッドファイナンス(Embedded Finance)がやりやすくなります。 つまり、暗号資産交換業以外のさまざまな事業者が暗号資産関連サービスを既存のサービスに組み込んで提供することがやりやすくなります。多くの人にとって、暗号資産により参入しやすい環境を作ることができます。そのほかに、DeFi(分散型金融)もどういう使い方であれば法的に問題のない形でビジネスを構築することが可能なのかも考える必要があります。もうマーケットは大きくなっているので、どう対応していくかは検討課題だと思っています。 河合健アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー/弁護士。自由民主党「Web3PT」ワーキンググループメンバー、経済産業省「スタートアップ新市場創出タスクフォース」委員、日本金融サービス仲介業協会監事、日本デジタル空間経済連盟監事、Metaverse Japanアドバイザー、大阪府「国際金融都市OSAKA推進委員会」アドバイザー、日本STO協会顧問、日本暗号資産ビジネス協会顧問等を務める。主として、フィンテック、ブロックチェーン、金融規制、IT・デジタル関連法務を扱う。 |インタビュー・文:増田隆幸|写真:小此木愛里
CoinDesk Japan 編集部