男子バレー、新生全日本が抱えている課題
「新しい司令塔を育てる」という南部監督の意向を考えると、その司令塔となる深津には、同じチームに所属している選手以外の攻撃をもっと積極的に試してほしかった。センターの打数は試合を追うごとに増え、改善されたが、サーブレシーブが乱れたときにはサイドに頼る単調な攻撃に陥った。 「2メートル超えのミドルブロッカーが3名、199センチの出來田敬を入れれば4名の大型選手がそろい、彼らが経験を積んだ」と、南部監督は収穫のひとつとして新たなミドルブロッカーの台頭を挙げたが、クイックのトスが低く、せっかくの高い打点でスパイクを打てていない。現時点ではその「高さ」を十分生かせていないのが実情だ。 サイドアタッカーにも同じことがいえる。深津と同じチームに所属し、スパイクのコンビネーションが合っている福澤達哉が第4週の小牧大会直前に右足首をねんざして戦列を離脱。その後は福澤の位置に入ったアタッカーのパイプ攻撃(センターからのバックアタック)がすっかり影をひそめた。変わって出場機会を得た白岩直也は大会の最終日、こう振り返った。「パイプの練習はしていますけど、まだ試合で使えるレベルではありません。自分のパイプ攻撃があれば、もっと楽にサイドアウトを取れたのにと思うと悔しいです。今後はさらに攻撃力をアップしないといけないと痛感しました」。 勝負の世界に「負けてもいい試合」は存在しないのかもしれないが、ワールドリーグは失敗をしてもダメージが少ない大会である。ドイツが若手中心で臨んできたように、選手やチームが経験を積む大会として各国で認知されている。全日本男子にも目先の勝利に固執せず、もっと課題の克服のために果敢に挑んでほしかったという悔いが残る。 このあと全日本男子は7月に国内で強化合宿を行い、そのあと対外試合を積んで、9月に開幕するアジア大会に臨む。「最終戦で勝てたことは大きな自信になるとは思いますが、世界との差はまだまだ広いと思っています。悔しいですが、それが男子バレーの現実です。これが男子再建への一歩になるよう、次につながる一勝にしたい」(南部監督)。 果たしてこの一勝が、次につながる一勝になったのかどうか。アジア大会での戦い方にも引き続き注目したい。 (文責・市川忍/スポーツライター) ※世界ランキングは2014年1月現在