涙の“敗退勘違い”から2日、広島大が「自分たちのサッカーで」関東勢破って強化ラウンド準決勝へ
[12.17 インカレ強化ラウンドGL第3節 東海大 1-2 広島大 スポーツ広場2] 【写真】「えげつない爆美女」「初めて見た」「美人にも程がある」元日本代表GKの妻がピッチ登場 国立大学の広島大が史上初めて関東勢を破り、第73回全日本大学サッカー選手権(インカレ)強化ラウンドの準決勝に進出した。前節終了時には敗退と勘違いして涙を流す選手もいたが、レギュレーション等を確認したところ勝利でグループリーグを突破できる可能性が高いことを確認。原点のパスサッカーに立ち返って大一番に臨み、東海大に2-1で勝利した。 広島大は2試合連続で後半アディショナルタイムに追いつかれて2-2で引き分ける中、首位通過を決めている東海大と対戦。強化ラウンドは各組の2位のうち首位に対して最も良い成績をあげたチームが「ワイルドカード」として準決勝に進出できるため、他組の結果などを考慮すると広島大は勝てばGL突破が確実になる状況だった。 広島大は中国大学リーグで“強者”の立ち位置である一方、全国大会ではチャレンジャーになるという大きな違いがあり、上泉康樹監督は「例えるなら日本代表のアジア予選とワールドカップ本大会」と表現する。インカレでは縦に早いスタイルを採用していたものの、運動量を必要とする中でスタミナ切れから勝ち点を落とす試合が連続。キャプテンのDF山邊樹(4年=山口U-18)は「1試合目も2試合目も相手のプレスが強くなってきたとき、どうしても蹴っちゃって相手に付き合っちゃう形が多かった」と振り返り、反省を踏まえて本来のポゼッションサッカーをGL最終戦にぶつける選択をとった。 「後悔したくない部分もありますし、自分たちのサッカーで負けたらしょうがないという気持ち。自分たちのサッカーをやって、それで結果がどう転んでもしょうがないよねという気持ちでやろうとみんなで話し合った」(山邊) リスクを冒した広島大は前半8分、自陣ペナルティエリア内でMF鈴木遼(4年=青森山田高)にパスカットされて先制を許した。それでも「相手の前プレ(前からのプレス)もかかっていなかったので、うちが今シーズンやってきたポゼッションサッカーを貫いた」(上泉監督)。次第に主導権を握ると前半43分にMF酒井大斗(4年=-東福岡高)のPKで追いつき、同アディショナルタイムには酒井が逆転ゴールを決めた。 準決勝進出へ期待が高まった後半は終盤にかけて東海大にチャンスを作られたものの「繋いでボールを動かしているので最後(スタミナが)もちましたね(笑)」と上泉監督。広島大らしいサッカーで挑み、3度目の正直で2-1の勝利を飾った。最終的に首位チームを倒したのは広島大だけ。ワイルドカードとして準決勝への挑戦権を獲得した。 2日前には敗退と勘違いしていた選手も多く、山邊は照れ笑いを浮かべながら「ミーティングをしていく中で次勝ったらほとんど(準決勝へ)いける状況になったと色々な人が伝えてくれて、じゃあやるしかないなという気持ちになりました」と当時の状況を説明。「レギュレーションを調べて伝えてくれたスタッフの方には感謝しないといけないと思って、気持ちを切り替えて頑張ろうってなりました」と決意新たに臨み、目標を果たした。 上泉監督によると「広大120年の歴史で関東に勝ったのは初めて」。今季で退任する指揮官にとっても嬉しい勝利になったが、ここまでには様々な苦労があった。国立大のため十分な運営費を用意することはできず、今大会での大学からの強化費もゼロ。上泉監督が2017年11月の監督就任以降に自腹を切った合計は相当な額に到達しているという。 また山邊は学業への比重が大きい広島大ならではの難しさを示す。テスト期間は練習に参加できない部員が発生することも珍しくなく、「練習の強度が落ちたりとかはあるので、そういうときにどんな声をかけるかつねに意識してやってきた」。現在の4年生は今回のインカレが入学から4回目の全国大会になっているため、経験値を積んで他地域にも渡り合えるチームづくりが進められてきた。 強化ラウンドを優勝すれば来季、中国大学リーグからのインカレ出場枠が1つ増加する。現在はわずか1枠という中での同ラウンド4強入りに指揮官は「地方にはまだ夢がある」と頬を緩ませる。準決勝ではGL3連勝の中央大と激突。上泉監督は「上のレベルに広大のポゼッションサッカーが通じるかチャレンジする。選手もチャレンジしたいと(言っていた)」と意気込み、東海大戦で掴んだ自信を発揮する構えだ。