寡黙な守護神が、リーグ制覇で初めて流したうれし涙。名古屋・篠田龍馬が語る「信じること」の大切さ。【F1上位リーグ第27節|ミックス/名古屋vs町田】
1月14日、Fリーグ2023-2024ディビジョン1ファイナルシーズン上位リーグ・第27節が行われ、名古屋オーシャンズとペスカドーラ町田が対戦。名古屋が2-1で勝利し、7年連続16度目のリーグ優勝を果たした。 2007年のリーグ開幕から、唯一のプロクラブとしての誇りを胸に、日本フットサル界の頂点に君臨する名古屋オーシャンズ。そんな“絶対王者”の肩書をもつ彼らは今シーズン、歴代で唯一優勝を逃した2016-2017シーズンに匹敵する苦難の1年を過ごした。 レギュラーシーズン終了時点で自力優勝が消滅し、首位・町田との勝ち点は最大で「7」開いた。それでもわずかな可能性に全力を注ぎ、仲間にポジティブな声かけを続けてきたのは、チーム在籍歴最長のキャプテン・篠田龍馬だ。 「もう二度と7年前の思いはしたくない」 誰よりも強い思いをもって臨んだ最終決戦では、タイムアップの笛と同時に喜びと安堵の涙を流した。 激闘を終え、篠田に話を聞いた。
「僕たちのゲームになる」というメンタリティで臨んだ
──優勝おめでとうございます。改めてシーズンを振り返って。 本当に苦しいシーズンでしたし、難しい1年でしたが、「自分たちがこのエンブレムを背負ってる意味」や「なぜここにいるのか」と初心に立ち返って、最後は戦えたと思います。 先ほど記者会見でも話しましたが、自分たちの力に疑問をもってしまうような時もありました。これだけの選手がそろっていても勝てないというのは、技術や戦術の問題だけではなく、そういう気持ち的な部分や自分を信じるというところも大きかったと思います。 でも、みんな今までの成果が認められてこのチームにいるわけで、そこは本当に自分たちの力や自分たちのフットサルに自信をもって、なおかつそこで全員が一致団結することは何よりも大事なこと。一人ひとりが仲間のために体を張ってプレーできれば絶対に勝てるという話を、このファイナルシーズン中もミーティングで伝えてきました。 それでも勝てなかったり、リードしていても失点を重ねて引き分けてしまったりもしましたが、それでも僕たちは自分を信じて気持ちを強くもって戦うしかない。 この前の取材でも「1回死んだチーム」という話があったんですけど、もう1回どころじゃなくて僕らは今シーズン、3回死んでいる。でも3回も死んで、最後の最後にこのチャンスが転がってきたということは、今日は町田の試合ではなく絶対に僕たちのゲームになるというメンタリティで臨みました。繰り返しになりますけど、絶対に勝てると信じ抜くことが大事だったし、信じられたからこそ勝てたんだなと今感じています。 ──その自信や執念が、今日の左肩でのブロックにも現れていました。 もう無我夢中であんまり覚えてないですね(笑)。ミスは少ない試合になりましたけど、相手の攻めに対してフォーメーションを変えるのがちょっと遅れたり、危ない場面を作られてやられそうな雰囲気もありました。 特に最後のパワープレーは、町田もかなり冷静だったし相手を見て判断していて、相当練習したんだろうということも感じていました。うちも守ろうとどんどん後ろに下がってしまっている感覚があったので、1点取られたあとに「下がらずに、攻める気持ちをもって守ろう」という話をして、やり切りました。 ──篠田選手のキャリアでも、こんなに多くのものをはねのけての優勝はもしかしたら初めてなのでは? そうですね。僕、勝ったり優勝して泣いたことないんですけど、今日は泣いちゃいました。 大分に負けて、いよいよやばいと誰もが思ったし、正直、僕ですら試合が終わった直後はちょっと諦めかけていました。 でも試合のあと、いつも僕が最初にロッカーに戻るんですけど、その時は櫻井(嘉人)GMが一緒にロッカーに入ってきて。状況的にはもう発狂してもおかしくない状況だと思うんですけど、ぼそっと「まだ何があるか分からんよ」と言ったんですよ。僕はずっと名古屋で櫻井さんについてきましたし、予言じゃないですけど、耳に入ったその言葉がすごく響きました。全てを失ってもいいという気持ちになりましたし、やっぱりクラブを勝たせたい。優勝したいと僕のなかのスイッチが入りましたね。