「妻を50人にレイプさせた事件」は“住民の人間関係”をも変えてしまった─かつては「サド侯爵」が住んでいた南仏の美しい村で起きた衝撃の事件
広がる混乱
この裁判はまた、マザンに政治的混乱を引き起こしてもいる。ルイ・ボネ村長は9月、村の評判を守ろうとした結果、英放送局「BBC」に対し、ドミニク・ペリコが「妻を殺していたなら、もっとひどいことになっていただろう」と語り、彼女は死んでいないのだから、自分の人生を立て直せるだろうと述べた。 このインタビューは人々の反発を招いた。村長はその後、ジャーナリストに囲まれ、「メディアの執拗な圧力のなかで」間違った言葉を選んでしまったと謝罪した。だが、人々の行動は早かった。 村長の辞任を求める野党議員の一人、イブ・ギャラスは「選挙で選ばれた人間として、そして何よりも女性として、彼の発言はまったく理解できないし、ましてや容認することはできません」と語る。「彼は被害者とその家族をいっさいサポートしようとしていないという印象を受けました」 批判に直面した村長は休暇を取ったが、いつ職務に戻るかは明らかにされていない。BBCの記事から1ヵ月後、彼はジゼル・ペリコの勇気は尊敬されるべきものであり、マザンの住民全員が彼女を支持しているとする新たな声明を発表した。 住民の多くは、自分たちの故郷がこの恐ろしい事件に関わっていること、そして全国紙の一面に「マザンのレイプ」に関する欄があることに動揺している。 土曜の市場でオリーブオイルや蜂蜜を販売している農家のクリストフ・シモニーニは、「影響は他にもあるだろうし、長引くだろうね」と語る。
Catherine Porter