「もうすぐ死ぬ」という現実。森永卓郎が伝える、悔いのない人生のための“仕事の終活”とは
思いついたらすぐ行動、しくじったらすぐ謝罪
新入社員の頃は組織の中で好きなことをするためにはどうすればよいのかを追求してきたが、早い段階で自分なりの方法論を私は見つけていた。 私が専売公社に入って最初にした仕事は資金係だった。当時、公社全体の売り上げが3兆円くらいあり、その資金を管理、運用する部署に配属されたのだ。 大変な仕事と聞いていたが、電算室の社員に私のやる仕事の手順を説明して、「これをプログラムに書いてよ」と頼み込んで、仕事はコンピュータにやらせるようにした。その結果、思いのほか暇になった。そこで私はちょっとしたイタズラをすることにした。
当時の専売公社は、国に専売納付金という税金を納めるときだけ、資金不足に陥っていた。 その際、大蔵省の資金運用部資金という郵便貯金などを原資にしたお金を約7000億円、7パーセントの金利で借りていたのだが、国庫余裕金を借りれば金利はゼロだった。 そこで「どうして金利ゼロの方から借りないのか」と係長に訊くと、国庫に余裕がないから余裕金がでないのだという。 そこで私は「だったら余裕を作りましょう」と伝えた。 当時は、専売公社の口座も一般会計の口座も、区分計上はされているものの、事実上同じ口座だった。 そこで資金運用部から使うあてのない数千億円を借りてきて口座に入れた。そのタイミングに合わせて「国庫余裕金使用申請書」を提出したところすんなり通ってしまった。 こうして専売公社は金利ゼロの金を手に入れたのだ。 このイタズラは数カ月後に大蔵省にバレてしまうのだが、専売公社は数カ月に渡って無利子の金を使えたわけで、その節約額は数十億円に及んだ。 私と係長は大蔵省の理財局に呼び出されてコテンパに怒られた。 ただ違法行為はしていないので「二度としません」という始末書を書くだけで無罪放免となった。
私には罪悪感はなく、むしろ高揚感に浸っていた。そして、楽しく仕事をするためには、思いついたらすぐ行動し、しくじったらすぐ謝罪すればよいことを学んだのだ。