「自分の命は自分で守る」 県防災アドバイザー井村氏が講演 龍郷町秋名・幾里
鹿児島県龍郷町幾里の秋名コミュニティーセンターで13日、県防災アドバイザーの井村隆介氏(60)による防災講演会があった。同町秋名・幾里住民と町消防団員ら約40人が参加。井村氏は「まずは自分の命を自分で守った上で、周囲の人を助けるという順序。一人一人が具体的に集落の防災を考えていってほしい」と住民らに伝えた。 集落の防災意識を高めようと、町と秋名・幾里集落自主防災組織が主催。県防災研修センターが実施する防災アドバイザー制度の出前講座を利用した。井村氏は鹿児島大学共通教育センター准教授(地球科学)で、国交省緊急災害派遣ドクターや県土砂災害アドバイザーなどを務める。 この日の演題は「災害時の自助・共助・公助」。井村氏は秋名漁港周辺をドローンで撮影した写真を示し、「災害が発生した場合、元の生活には絶対に戻らない。それを理解しておく必要がある」と前置き。「秋名・幾里は、自然災害を考えたときにはかなり厳しい問題を抱えている。孤立に備えた防災を考えなくてはならない」と提唱した。 講演の結論は「自分の命は自分で守る」。井村氏は「そのために必要なことを考え、その上で手助けがいる場合は、自分でできることとできないことを明確にしておくことが大事」とした。 1960年5月に発生したチリ地震で奄美大島に到達した津波についても、当時の奄美市名瀬の記録写真を示して説明。同市笠利に5メートル、名瀬で4・5メートルを記録し、市街地などが浸水した様子を紹介した。
井村氏は「共助と公助ができるのは、自助ができた人だけ」と強調。2021年5月の災害対策基本法改正で作成が市町村の努力義務になった個別避難計画についても言及し「災害発生の季節や時間、天候などによって避難行動は変わるので、臨機応変な対応が必要。支援者が必ずしも防災のプロとは限らないため、支援者が自分の命を守りつつ、要支援者を避難所に連れて行くのは矛盾がある」「民生委員や消防団、自主防災組織、自治体職員などが〝命を懸けて助けに行く〟ことを基本とすることはよくない」などと指摘した。 聴講した幾里集落の男性(65)は「自分が助からないと人を助けられないということを再認識した。災害を楽観的に捉えず、確かな情報を基に避難行動をすることが大事。一人一人が危機管理能力を高めていく必要がある」と話した。