内戦危機? イエメンで何が起こっているのか
新憲法案めぐり「クーデター」
この騒動の背景には、新しいイエメン憲法案をめぐる政治的な駆け引きがあります。ハーディー政権は新憲法案の発表を準備していましたが、ホーシー派はこれに反対して政治的な譲歩を引き出そうとし、ついに実力行使に打って出たのです。 30年以上も国家元首の地位にいた前大統領が「アラブの春」で退陣した結果、イエメンでは2012年から新しい政治体制づくりがスタートしました。この新体制づくりの最高責任者として、旧体制で副大統領をしていたハーディーが大統領に選ばれました。任期は2014年2月までの2年間でした。 この2014年2月までに新憲法の制定、それに基づく選挙を行うというのが当初の計画でした。しかし、この計画は遅々として進まず、任期切れを迎えたハーディー大統領は「もう1年間の間で新憲法と選挙を行いたい」として任期を自ら延長したのです。この約束の1年間が終わるのが2015年1月でした。ハーディー政権は、すでに延長した任期の成果をアピールするためにも、そして、さらなる任期の延長を正当化するためにも、どうしても新憲法案の発表が必要だったのです。 一方、ホーシー派は新憲法の内容に反対していました。特に、この憲法で具体化されるはずだった新しい国家体制の在り方(具体的には連邦制の内容)に強い不満を持っていました。昨年9月には武力で首都を制圧し、「ホーシー派の納得がいくまでは憲法は出さない」という約束をハーディー政権に結ばせたほどです。 しかし、なんとしても憲法案の発表が必要だったハーディー政権は準備をどんどん進めました。こうした政権の足元を見て、ホーシー派は様々な要求(政府の重要ポストなど)を出しますが交渉は思うように進まず、今年1月ついに暴力に訴えたのです。 公約を果たさないまま任期を延長し続けようとするハーディー大統領と、要求のためには暴力をも辞さないホーシー派との間で、新しい政治体制づくりは暗礁に乗り上げています。