奥平大兼インタビュー 光栄なことにデビューから4年で黒沢清監督作品に出演することができた『Cloud クラウド』
憧れの役者は‥‥僕が1番銃を撃っている(笑)
――凄くいい経験でしたね。最近の日本映画ではあまりない、ガンアクションも経験されましたね。練習とかされたのですか。 僕が一番銃を撃っていますしね(笑)。一応、銃に慣れていないといけなかったので練習もしました。実際には銃弾は出ないので、反動がないんです。その反動をちゃんと作らないといけないので、ガンアクションの専門の方に教えてもらいました。ライフルもあったのですが「ちょっと慣れてるけど、あまりかっこつけ過ぎないで欲しい」と言われていたので、スマートさを心掛けて、これが普通という感じにやる為の練習をしていました。 ――そうなのですね。ちょっと日本映画っぽくない感じがこの映画の味で良かったです。 そうですね。確かに日本映画っぽくないかもしれません。 ――黒沢監督のクリント・イーストウッド好きを感じる映画でした。この映画を観て人間関係の難しさを感じました。 この映画では、人が裏で感じていることや自分の見えていない部分で人が思っていることが行き過ぎると、どうなるのかを描いていますが、極端にいくとこういうことになるんだ‥‥と思いました。 ――凄く怖かったですね。その人に対して悪気があるわけでもないのに、もしかしたら自分もそう思われているかも‥‥と思ってしまって。だからこそ人間関係を大切にしないといけないと思いました。 本当にそうですね。極端ではありますが、人間の行きつくところはこれなんだと。もしかしたら映画で描かれているように自分が思われているかもしれない、決してゼロではないと思うので怖いです。 ――現場で色々な方に出会われると思います。奥平さんが人間関係で大切にしていることを教えて下さい。 無理して仲良くなろうとは思っていないです。自分から話しかけることもそんなにしないので‥‥、もちろん気が合って仲良くなる人は居ます。人との距離感というか、無理して人(演者さん)とお喋りしたり、中途半端に仲良くなるようなことは、最近しなくなりました。現場で無理して仲良くなろうとすると、お芝居に悪い意味で影響が出るのではないかと思うようになったからなんですが、今はそれを大切にしています。 ・・・ 表情がまったく読めない人物ほど恐ろしいものはないのですが、奥平さんが演じた佐野は、まさにそんな役です。普段は表情豊かに語る奥平さんが本作では、ガラリと姿を変え、スクリーンの中に佇みます。しかも菅田将暉さん演じる主人公・吉井を慕う役というのも少し不気味で面白い。この映画『Cloud クラウド』は、スリラーなのかサスペンスなのか、はたまたハードボイルドなのか。ジャンルにはめることが出来ないまま、新しい感覚を楽しむ黒沢清監督の脳内を覗き見するような作品。そんな本作でまた新たな奥平さんの“顔”を見つけた気がします。
取材・文 / 伊藤さとり