奥平大兼インタビュー 光栄なことにデビューから4年で黒沢清監督作品に出演することができた『Cloud クラウド』
先輩たちの印象
――先輩たちとお話をされて印象に残っていることはありますか。 雑談ばかりしていました。荒川(良々)さんとはドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(日本テレビ系 / 2023)でご一緒していますし、(岡山)天音さんはドラマ「ケの日のケケケ」(NHK / 2024)の時の先生役でした。個人的に1対1でお話する機会もあったので、そのお二人とは特に緊張することもなく過ごせました。 ――私は個人的に奥平さんが演じられた【佐野】が一番興味深かったです。 そうなんですか(驚)。凄く嬉しいです。 ――【佐野】は何を考えているのかわからない、掴みどころのないキャラクターです。あの難しい役をよく演じられているなと思って観ていました。特にラスト、「この人はもしや?!」と思ったぐらいです。こんなに難解なキャラクターをあの先輩俳優陣の中でしっかり演じられていました。 黒沢監督が本当に色々なことを教えて下さったんです。演劇的な演出だったのですが「どういうルートをたどってお芝居をするのか」とか「この台詞を言う時はこの場所で」とか、僕だけかもしれませんが、喋る位置が決められていました。そのお陰もあり、そういう時にするお芝居というものを教えて頂きました。こんなにも贅沢なことはなかったです。 ――凄いですね。 本当に楽し過ぎて(笑)。僕にこんなふうに演出してくれて、色々と教えてくれたりして、「菅田くんはこんなふうにしていたでしょ」と菅田さんの凄いところも教えて頂きました。まさかここまで丁寧に黒沢監督が演出して下さるとは想像もしていなかったので、本当に貴重な体験をさせて頂きました。刺激的な現場でした。 ――それは凄いですね。忘れられない経験になったのかもしれませんね。今回の作品で学んだことや新たな発見があれば教えて下さい。 『Cloud クラウド』で演じた【佐野】は菅田さん演じる【吉井】の言う事に従うことはあっても、圧倒的に自分の中に持っている何かがあるという役で、堂々としていないといけない役でした。菅田さんと1対1で話す時も堂々としていないといけないとなった時に、ちょっと技術的な話になりますが、今まで僕は本番中にリラックスし過ぎて、フラフラしてしまったり、目線を色々なところにやってしまいがちだったんです。それをしないでただただずっと立っているということが僕にとっては逆に新しくて、そして難しいことでした。そうして演じている姿を画で観た時に、「この人、何かを持っている」という圧倒的な自信があるのではないか、と思わせる瞬間を見つけることが出来ました。 そして、『Cloud クラウド』で見つけた演技を活かしたのが、『Cloud クラウド』の後に撮影した『赤羽骨子のボディガード』になります。『赤羽骨子のボディガード』では一番強い役で色々な人を言い聞かせる役でしたが、『Cloud クラウド』の経験を活かして、僕はあまり動かず目線もあまり動かさない演技を心掛けたんです。 ――そういう演技の仕方はどなたに教わったのですか。 黒沢監督と菅田さん、お二人にです。菅田さんはそういう演技が本当に凄くて、まったく動かないのに不自然じゃないんです。そんな簡単に出来る事ではないと思うので、僕はそんな菅田さんの演技を間近で見ることが出来て、さらに教えて頂くことが出来て本当に勉強になりました。