中日は田中将大の獲得に乗り出すのか?「環境」「キーマン」「過去の実績」から考える
田中将大の楽天退団発表は驚きをもって迎えられた。 NPBではイーグルス一筋で、球団創設初にして現状ただ一度の日本一に導いたレジェンド右腕だ。2021年の復帰後は徐々に成績が低下、今季ついに未勝利に終わったとはいえ、仙台で日米通算200勝を果たすものだと思っていた。 【動画】復活が待たれる「神の子」の快投 田中将大の変幻自在投球をチェック 報道によると、田中側が制限を超える大幅減額に応じられず、球団との双方協議の末に自由契約になるという。この状況に他球団はどう動くのか。本稿では中日の獲得可能性について考えたい。 ■実績のある投手を1枚でも多く まずは球団、チーム内の環境から考えてみよう。 現状の中日は3年連続リーグ最下位に沈んでおり、今オフは小笠原慎之介のポスティングによるMLB移籍が濃厚、かつ守護神ライデル・マルティネスの流出も現実味を帯びている。強みであった投手陣の弱体化が進みそうな状況だ。実績のある投手を1枚でも多く確保したいのなら、田中の獲得を検討するのは悪くない。 本拠地・バンテリンドームナゴヤの存在も追い風になるか。12球団本拠地のうち屈指のピッチャーズパークで、天候によるローテーションの崩れも生まれにくい。中10日前後で投げることを想定しても、ドーム球場を本拠地にするのは得策だろう。 ■キーマンは新コーチの小山氏か 中日は楽天と縁深い球団の一つだ。楽天の創設直後は山﨑武司ら中日OBがチームの屋台骨を支え、今も阿部寿樹が在籍している。 田中と縁のある野球人といえば、同級生の大野雄大、日本代表で共に戦った涌井秀章が挙げられる。そして来季からは、小山伸一郎氏が投手コーチに就任。田中とともに日本一メンバーになった熱血漢で、今季も2軍コーチとして田中の状態を見てきている。 小山コーチがOKと見ていれば、獲得に動く可能性は高くなるのではないか。 ■松坂をはじめ「過去の実績」も 中日には、田中と似た状況のレジェンドを獲得した過去がある。 例えば、2018年の松坂大輔がそうだ。当時の首脳陣はソフトバンクを自由契約になっていた松坂を名古屋に呼び寄せ、室内練習場でテストを行った上で獲得。同年、松坂は開幕ローテに入り6勝をマーク。カムバック賞に輝いた。 川上憲伸と福留孝介も近い例かもしれない。川上は2011年にMLB球団、福留は20年に阪神から自由契約となり、中日が獲得。両者とも古巣に戻る形ではあるが、ベテランとなったレジェンドの移籍という点では田中と同じだ。 年俸の面で考えると、松坂は1500万円、川上と福留は3000万円だった(金額は推定)。仮に田中獲得に動く場合、このあたりのボリューム感を提示すると見る。 ■可能性はゼロではない? 田中の退団が伝えられた直後、井上一樹監督は「情勢を見守る」とコメント。獲得に動く場合は「誠意を伝える」と含みを持たせた。加藤宏幸球団本部長は「今の時点で申し上げられることはありません」とし、肯定も否定もせず。どうやら、可能性はゼロではなさそうだ。 すでに在京球団の調査報道が出ていたり、故郷のある在阪球団が獲得に動くのも想像に難くない。現状では「第三以下の選択肢」だろうが、中日で再生→大台到達を果たすのも悪くないのでは。そう考えるのは筆者だけだろうか。 [文:尾張はじめ]