東ちづる「40代で母娘一緒にカウンセリングを受け、子離れ・親離れができた。お互い<見ない、聞かない、知らない>を大事にすることで、いい関係を築けるようになって」
幼い頃から「いい子」を演じ、自分の気持ちを押し殺してきたという東ちづるさん。40歳のとき母と一緒にカウンセリングを受けたことで、それぞれが自分らしく生きられるようになったと言います(構成=内山靖子 撮影=宮崎貢司) 【写真】自宅にて母娘2人、愛猫も一緒に * * * * * * * ◆子離れと親離れを同時に達成 カウンセリングは、母と私それぞれで3回、合同で3回の計9回、約半年間に及びました。私の期待通り、母は自分の素直な思いを吐露できるようになり、徐々に変わっていったのです。 それまでは、「これをやってみたいんだけど大丈夫かしら?」と、何かを決めるときは必ず私に確認していました。一緒にお寿司屋さんに行って、私がマグロを頼めば、「じゃあ、私もマグロ」。イカを頼めば「私も同じのを」と。 それがカウンセリング後は、私が何を頼んだかなど確認せず、「私、サバをもう一貫」と、自分の意思を口にできるようになりました。 親や夫、子ども、友だちなど、他人の意見を優先させ、自分の本心を抑えていたことに、母は気づくことができたのです。私は涙が出るほど嬉しかった。
カウンセリングを終えて20年も経つと、人工股関節の手術を受けることを1人で決めていて。「こっちの都合もあるから、もっと早く教えてよ!」と妹が怒ると、「なんで? 入院するのは私よ」と。 さらにこの前は、私の誕生日を忘れていたんです(笑)。「いい母親」であることに固執していた以前の母だったら、そんなことは絶対にありえなかった。 「何がほしい? お祝いの食事はどうする?」って、何日も前から準備していましたからね。でも、それだけ自分のことに目が向くようになった証拠です。 一方で、私自身もいい方向に変わることができました。カウンセリング前は、それまでよりラクになったとはいえ、相変わらず「いい子でいなきゃ」という思いが残っていて。人前で失敗したり、他人に自分の弱みを見せることに臆病でした。 ところが、カウンセリングで自分の弱い部分をさらけ出せたことで吹っ切れた。現在公開中の『まぜこぜ一座殺人事件~まつりのあとのあとのまつり』という映画は、私が企画・プロデュースしたのですが、何のノウハウもない仕事への挑戦に、以前だったら躊躇していたと思います。 それができたのは、「初めてなんだから、失敗したっていいじゃない」「わからないことやできないことは、周りに聞いて助けてもらおう」と思えるようになったから。カウンセリングを経て、母と私はやっと子離れ、親離れができました。
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