「仙台空港カントリークラブ」の経営権を巡る戦い ~ 2年間の空転を経て正常化 ~
太平洋を見渡す緑豊かな丘陵地にある仙台空港カントリークラブの経営が落ち着きを取り戻した。2023年5月、ゴルフ場運営を巡り、新経営陣とゴルフ会員らが対立し、会員側が運営会社の会社更生法を申し立てた。この申立は裁判所から棄却され、会員側は厳しい状況に直面したが、2024年12月に経営権を取り戻した。 類を見ない経営の争奪の裏側を東京商工リサーチ(TSR)が取材した。
舞台の仙台空港カントリークラブの運営母体は、(株)仙台空港カントリークラブ(TSR企業コード:140342788)だ。大型レストランを備え、18ホール(パー72、6,574ヤード)の雄大な丘陵コースで、地元ゴルファーを中心に人気だった。しかし、ゴルフブームが下火になった2003年8月、投資負担に耐えられず東京地裁に負債113億円を抱えて民事再生法の適用を申請した。 その後、「米原ゴルフ倶楽部(千葉県市原市)」などを経営する(株)エイチ・ジェイ(TSR企業コード:295625317)がスポンサーとなり、2006年に再生手続きを終結した。
新株主の出現で経営が一変
仙台空港カントリークラブの100%株主となったのは、スポンサーのエイチ・ジェイのグループ会社であるSW開発(株)(TSR企業コード:297408933)だ。 ところが突如、問題が表面化した。SW開発の株主はエイチ・ジェイのグループ企業とグループ外の2社だったが、このうちグループ外の1社の持ち分が売却されたのだ。また、SW開発の過半を持つ新しい株主が出現した2023年2月、仙台空港カントリークラブの一部取締役が解任されたことも明らかになった。
旧経営陣や一部会員は「乗っ取り」と糾弾
SW開発の経営権を取得した側は、2022年12月27日に臨時株主総会を開催する。そこでエイチ・ジェイの取締役2名と監査役1名の解任を通告した。 エイチ・ジェイや一部会員は、この役員解任などの行為を「会社乗っ取り」と反発し、新しい経営側との対立が表面化した。 そして、エイチ・ジェイと一部会員など25名の債権者が2023年5月、仙台空港カントリークラブの会社更生法の適用を東京地裁に申し立てた。同日、調査命令を受け、調査委員が選任された。2022年12月末現在の負債は約7億5,000万円、債権者数は約1,900名だ。