【MLB】ジャイアンツ、総額4億ドルの補強も地区4位と低迷
【MLB最新事情】 3月のこのコラムで、大谷翔平、山本由伸の両者の獲得に失敗したジャイアンツが、「プランB」で総額4億ドルの補強を敢行したが、果たして大丈夫なのかと書いた。5月13日~15日、現地で取材したが、かなり厳しい。 2年総額6200万ドルの左腕ブレイク・スネルは3試合11.2イニングを投げ、0勝3敗、防御率11.57。内転筋の損傷で、4月下旬に負傷者リスト入りした。投手陣の防御率4.56はMLB26位だ。 だがそれ以上に問題なのは野手陣。6年総額1億1300万ドルで契約した中堅手の李政厚が12日に外野フェンスに激突、左肩を損傷、長期離脱は避けられない。ここまで打率.262、長打率.331で、調子を上げていこうとしていた矢先だった。 3年総額4200万ドルで三番打者を任されてきたDHのホルヘ・ソレアは、打率.202、長打率.361でわずか8打点と低迷、今は肩の痛みで負傷者リストに入っている。3年総額5400万ドルのマット・チャプマン三塁手も打率.206、長打率.341である。 23年のジャイアンツの弱点は打線だった。昨季のOPS(出塁率+長打力)は.695で30球団中26位だった。そこで大谷を狙ったが、失敗。プランBの補強をしたが今現在.671で20位と低迷している。 15日、NBCスポーツベイエリアのアレックス・パブロビッチ記者は「問題は打撃陣だが、大谷が入っていたら全然違っていたかもしれない」と言う。14日、大谷の特大弾は右中間席を悠々と越え、マッコビー湾の手前のコンコースに落下した。「右中間は深いからトリプルズアレーと呼ばれ三塁打が出やすい。だからあそこの高い壁を超える本塁打は見たことがない。コンコースに届くのはほとんどの場合、右翼ポールの側だ。問題はマリーンレイヤーと呼ばれる低温高湿の空気層。冷たい海の影響によって上空より地表近くの空気の温度が低くなっていて、特にナイトゲームではボールが飛ばない。あそこに飛ばせたのはバリー・ボンズだけだ」と指摘する。 打てないのなら機動力を使えればと思うのだが、23年の盗塁数は57個と最下位で、ファーハン・ザイディ編成本部長は昨オフに改善すると言っていたが、今季も最下位の14盗塁。しかも9度も失敗している。俊足の李も5回盗塁を試み成功は2回だった。ゆえに総得点数は169得点で全体22位である。 「今現在スタメンの9人のうち7人がケガをしているためだが、全員が試合に出ていたときでも1試合に3点しか取れなかった」とパブロビッチ記者は嘆く。大谷は子どものころボンズにあこがれ、オラクルパークの試合をテレビでよく見ていたそうだ。 「歴史的な球場というか個人的にはすごく好きですし、きれいだなってイメージ。ボンズ選手のホームランの映像とかずっと見てきたのでプレーできて良かった」と笑顔だった。そのボンズは現在ジャイアンツのアドバイザーで毎日球場に来てダグアウトの裏にある室内打撃ケージで選手を指導していた。だがボンズであっても大谷のような打者を育てるのは容易ではないのである。 文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール