アフガン版「シンドラーのリスト」はスマホならではの緊迫感 タリバン政権に弾圧されそうな人たちの救出劇
映画「苦悩のリスト」は、復権したタリバン政権に処刑されそうな芸術家や映画人らを救出したドキュメンタリー。スマホ撮影の動画は緊迫感がみなぎる。AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号より。 【写真】ドキュメンタリー映画「苦悩のリスト」のワンシーンはこちら * * * 2021年8月、イスラム急進勢力のタリバンがアフガニスタンの首都カブールを掌握し、ガニ政権は崩壊した。 銃声が響き、人々は大混乱をきたして逃げ惑う。カブール国際空港はそんな避難民でごった返した。アフガン政府の後ろ盾の米軍は8月末に撤退する。離陸する軍用機の車輪にしがみついて逃げようとした人たちが、上空から次々に地上に振り落とされてゆく。 「まるで木の葉みたいに落ちていく。恐ろしくて言葉も出ない」。一部始終を目撃した住民が嘆息する。ドキュメンタリー映画「苦悩のリスト」は、そんな衝撃的な光景を描き出すところから始まる。 ■タリバン批判のリスト イラン出身の映画監督のモフセン・マフマルバフは自国の検閲を嫌い、隣国アフガンで活動後、現在は英国で暮らしている。タリバン復権を目前に控え、弾圧されそうな人たちのリストが彼の元に寄せられた。映画監督、俳優、音楽家、ジャーナリストらとその家族、合計800人。この20年間、タリバンを批判する映画や報道にかかわってきた人たちばかりだ。本作は、その人たちを救出するアフガン版「シンドラーのリスト」である。 次女のハナ・マフマルバフ(1988年生)は父モフセンに「ちょっと手伝ってくれないか」と言われて、父のアパートメントにやってきた。「ほんの1時間のつもりが……それから5週間、行動を共にすることになったのです」とハナ。映画人一家で育った彼女は早速、自分のiPhoneのビデオ機能でモフセンや兄による救出活動を撮り出した。「私の癖のようなもので、ショックを受けたり嬉しかったり、何か自分の気持ちが動くときに自然に撮るんです」。映画は、そうして偶然記録されたマフマルバフ家の動画に基づいている。