社会人3年目に求められることは?キャリアを築くための7つの行動原則
入社3年目を迎えると、会社からの期待が大きくなり、役割も変化していきます。今後のキャリアプランを見つめ直す人も多いでしょう。そこで、入社3年目社員を対象とする企業研修を多く手がけ、「入社3年目の心得」の著書も持つ研修講師・堀田孝治さんに、企業から求められること、今やっておくべきこと、キャリアプランの立て方などについて、アドバイスをいただきました。
社会人3年目で求められることは?
私は企業研修講師として、「入社3年目社員」を対象とした研修を依頼されることが多々あります。では、企業は3年目社員に何を求めているのか。一言で言えば「独り立ち」です。 ここまで手厚く教育・研修を施してきたが、ここで一旦「卒業」。自立して働けるようになり、後輩を指導していく役割も担ってほしい――そう考えているのです。 「独り立ち」を言い換えると、「自分でPDCAを回せる」ということです。 Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(確認)→ Act(改善) 自身の目標達成や組織の改善のために必要なことを自分で考え、実践していく。誰かに作ってもらったプランを下請け的にこなすのではなく、自らプランを作っていくこと、そしてやりっぱなしではなく、ブラッシュアップし続けることが期待されるのです。
社会人3年目からやっておくといいこと
では、自身でPDCAを回せるようになるには、そしてそのレベルを高めていくにはどうすればいいのでしょうか。 私が社会人3年目の皆さんにおすすめするのは、「アプリ」だけでなく「OS」を鍛え上げることです。ここで言うアプリとは、知識・スキル・テクニックを指します。例えば、「商品知識」「その会社の事務処理の手順」「商談スキル」などです。 しかし、どんなに優れたアプリを搭載していても、それを使いこなす「OS」がまだ「勉強仕様」だったり、「作業仕様」だったりでは、「仕事」というフィールドで高い成果を発揮することはできません。 そして、気をつけてほしいのは、「アプリ」は、異動したり、転職したりした瞬間に力を失う可能性が高いのです。いくら「商品知識」や「その会社の事務処理手順」を習得しても、それは他社に転職した瞬間に無価値になってしまうのです。 実は私はそのことを、痛いほど体感した経験があります。私は、28歳で「営業部門」から「マーケティング部門」に異動になったのですが、アプリにだけ頼ってきた私は、まったく仕事ができず、休職にまで追い込まれてしまったのです。 真に仕事ができる人は、私と違って、異動や転職でつまずいたりはしません。その人たちは、「アプリ」以上に、それらを使いこなす「OS」を若手時代に鍛え上げているのです。「OS」が仕事用としてきちんと確立できていれば、どこで、何をやっても戦えるのです。 3年目で身に付けておきたい「仕事のOS」の核となる、7つの「行動原則」をご紹介しましょう。 ◆1.価値創出 「インプット(調べる、学ぶ)」だけでなく、「アウトプット」を意識しましょう。「スキルを身に付ける」にとどまらず、「価値を出す=貢献する」ことを意識し、実践するのです。学生時代は「問題」が与えられていましたし、社会人1年目くらいまでも会社から与えられていたでしょう。しかし、「言われたことを」「誰がやっても同じように」やるだけでは、「仕事」ではなく「作業」です。これからは「自分で問題を創っていく」「自分ならではの『価値』を付加する」ことを心がけてください。 ◆2.逆算 勉強は個人種目であり、「自分の勝ち」を考えます。一方、仕事は団体種目。「チームの勝ち」から逆算して、「チームが勝つために自分は何をすべきか」を考えます。 また、顧客を中心に「相手の立場」から逆算し、相手が求めている行動をとること、「ゴール」から逆算して段取りを行うことも重要です。 ◆3.守破離 「守・破・離」とは、芸事や武道をはじめ、スポーツやビジネスの世界でも重視される成長のプロセスです。企画する、説得する、生産する・・・・「仕事」もスポーツと同じ「実技」ですので、「守破離」で効果的に自己を高めていきます。 「守」──師の教えや流派の型を守り、数多く反復し、体得する 「破」──他流派などの教えなども含め、独自の工夫をして、型を破る 「離」──さらに発展させ、自分の型を創り上げる 自分が今どの段階にあるのかを意識し、このステップを踏んで鍛えていきましょう。良い型を身に付けるには、「学び方を学ぶ」ことも大切です。周囲で学び方が上手な人を探し、真似てみてください。 リモートワークが増えた現在は、上司や先輩から適切なフォローを受けられる機会が減っています。 会議が終わった後、廊下を歩きながら疑問点を聞いたり、電話での会話内容を隣で聞いた上司からアドバイスを受けたりすることがしづらくなっている人も多いでしょう。だからこそ、自分から積極的にアプローチし、悩みや疑問をぶつけてください。 ◆4.てこ入れ てこの原理とは「少ない入力」で「大きな出力」を出すことです。仕事での努力の量が成果につながらないときなど、「てこ入れ」が必要です。 目の前に出てくる問題に対処していくやり方で時間を消費するより、問題が起きないよう対策するほうが効率的です。例えば「問い合わせメールが毎日30通くるから、一通ずつ返信する」人と、「30通も問い合わせがくるのは、ホームページがわかりにくいからなので、ホームページを改良し、問い合わせ自体を大きく減らす」人がいます。定期的に「本質的な問題」を見据え、てこ入れを図ってください。 ◆5.両立 仕事は「両立」という行動原則が効果を発揮する種目です。「どちらか」ではなく、まずは「どれも」「AもBもCも」というアプローチをおすすめします。 例えば「品質を上げて、コストを下げる」という矛盾した課題に対し、両立させることが価値を生み出します。高度な両立の実現を目指すことで、ビジネスセンスが磨かれます。 ◆6.同時多面的 仕事をする人の主語はさまざまです。若手は「私」ですが、視座が上がると、「事業部の業績のために」「会社を成長させるために」「この業界をより良くするために」と、主語の規模が大きくなっていきます。 仕事は「部分」だけでなく、「全体」をとらえましょう。「このスイッチを入れると、どこがどう動くか」を事前に考えてから動くのです。視座を高めて全体像やつながりを理解し、「同時多面的」な思考と行動を実践しましょう。 ◆7.自己選択 「仕事」には、「勉強」と違って「唯一の正解」といったものはありません。逆にいえば、「全員が賛成する答え」などはほとんどなく、何を選んでも、必ずなんらかのリスクがあります。そんな「仕事という種目」での主体者は、自分の選択を、自分で引き受けられる人です。 仕事ができる人とは、「やるかやらないか」といった2択ではなく、常に「仕方(しかた)」がたくさんある人です。そして多くの選択肢から納得した「自己選択」ができる人です。選択肢を増やすためには、視野を広く、視座を高く、視点を変えて柔軟に思考することが大事です。