BMW i5 詳細データテスト 乗り心地は硬め ハンドリングは良好 航続距離は物足りない
はじめに
エグゼクティブサルーンが過去数十年にわたり名声を得てきたのは、コンサバティブさによってであり、それは揺るがし難い事実だが、いまや全面的に正しいとはいえない。25年前、カンパニーカーの購入者は、手頃な価格で装備内容もほどほどの高効率ディーゼル車。リスクを選ぶようなことは避けたものだ。 【写真】写真で見るBMW i5とライバル (16枚) BMWはこのとおりのセオリーをなぞってきたようなメーカーのひとつだが、CO2排出量ベースの税制に押されて、そのマーケットは激変した。 5シリーズはそれに伴って変革を遂げてきた。8代目となるBMWの中核セダンは、未来に向けて大きなステップをもうひとつ上がろうとしている。英国市場からはディーゼルが姿を消し、先代のアップデート版であるMHEVとPHEVに合わせて、歴代初のBEVモデルが登場したのだ。ゼロエミッションのi5は、セダンだけではなくツーリングも設定されると見られ、1モーターと2モーターが選択できる。 2年前まで、オートカーが完全電動のBMW 製セダンをロードテストにかける機会はなかった。しかし、今回のi5はi4とi7に続く3度目で、セダン系に限らなければiXやiX3、iX1もすでに市場に出回っている。BMWのなかで、ゼロエミッション勢力は急拡大を続けている。BMWきっての長寿銘柄にとって、それはどのような意味を持つことになるのだろうか。
意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆
プラットフォームは、先代モデルに用いられたCLARのアップデート版であり、BEV専用のものではない。 サイズはかなり大きくなった。先代のG60型は、全長5mを超え、全高が1.5mに達した初の5シリーズだったが、今回はそれよりホイールベースを20mm伸長。全幅も広くなったが、ドアミラーの小型化により、もっとも広い部分で15mmの拡幅に抑えた。ミッドサイズセダンの、一般的に許容される限界を探ろうとする試みがはじまったようだ。 グロスブラックのサイドシルとボディ下部のトリムは、視覚的にボディの重量感を削減しようという意図が見て取れる。それでも、このクルマには大柄さを感じずにはいられないし、すべてのテスターがそれに魅力を感じたわけではない。 とはいえ、それを埋め合わせる一助となっているのが、i4やi7よりトラディッショナルでクラシックなBMWの主要な要素だ。比較的ノーマルなプロポーションのキドニーグリルや、Cピラーのホフマイスターズキンクのスッキリした解釈などがそれである。 新型5シリーズのパワートレインは、520iのミラーサイクル・ガソリンターボではじまるラインナップ。マイルドハイブリッドのおかげで、200psをわずかながら上回る。その上には、ディーゼルの520dや、ガソリンの530iや540iが投入される市場もあるが、英国ではそこを飛ばして、次はいきなりPHEVとなる。 530eは2.0Lガソリンターボに、強化されたハイブリッドシステムを組み合わせて299psを発生し、101kmの電動走行を可能にする。550e xドライブは、直6ターボのPHEVで、最高出力は490psだ。 そしてBEVだ。今回テストするi5 eドライブ40は、340psのシングルモーターだ。上位のi5 M60は、フロントに260psのモーターを追加する。どちらもバッテリーはニッケル・マンガン・コバルトで、81.2kWhの容量は主要なライバルを凌ぐほどではないが、このクラスで十分に競争力を主張できるものだ。 ICEモデルのサスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンク。英国仕様のグレードは、Mスポーツがベーシックで、ほとんどのモデルがスティールのローダウンスプリングとパッシブダンパーのスポーツサスペンションを備える。 一方のi5は、専用の改修を施したアクスルと、リアの自動車高調整式エアスプリングを組み合わせ、リアマウントしたモーターの重量に対応する。長年にわたり5シリーズ・ツーリングに採用されていたようなメカニズムだ。 アダプティブダンパーは、中間グレード以上とi5で、アダプティブサスペンション・プロフェッショナルパッケージを選択すると装備される。ただし、4WSも同時に装着される。テスト車は、どちらも未搭載だが、最上位のi5 M60には乗り心地重視のアクティブスタビライザーと合わせて標準装備される。 テストしたi5 eドライブ40 Mスポーツ・プロの重量は2213kgで、2022年に計測したメルセデス・ベンツEQE350+より170kg少々軽い。また、2023年初めにテストした3モーターのテスラ・モデルSプレイドの重量もわずかに下回る。大型EVの水準としては悪くないが、抜きん出て軽いわけではない。