吐く力を鍛えて誤嚥性肺炎を予防!60代以降の男性は要注意「のど仏の位置を鏡でチェック!」【医師監修】
「のどの老化」チェックリスト8「ひとつでも当てはまれば注意!」
ひとつでも該当する症状があれば飲み込む力が落ちている可能性あり! □食事中、むせたり咳き込むことが増えた □水を飲む時もむせることがある □大きい錠剤が飲みにくくなった □「ごっくん」したとき喉仏が上がりにくい □食中、食後に咳や痰が出る □食事のスピードが落ちた □声がかすれる □以前より声が小さくなった
吐き出す力を鍛える「のどトレ」
飲み込む力と共に鍛えたいのが、誤嚥しそうになった時に咳をする「吐き出す力」だ。西山医師が「特に効果が期待できる」という体操が次の2つ。 「のどトレ」を習慣化して嚥下機能を強化 ■ハフィング訓練(1セット×10回を好きな時に1日3セット以上) <1>背筋を伸ばし胸に手を当て数回深呼吸後、ゆっくり息を吸い込む <2>胸を押しながら、声を出さず勢いよく「ハッ」と息を吐き出す 【ポイント】 痰や異物を吐き出すための訓練のひとつ。 「意識的に息を強く吐き出すことで、誤嚥した異物を吐き出す力を鍛えます。毎日継続して行なうことで、体にそのやり方を覚えさせることが大切です」 ■ペットボトル体操(1セット×10回を食事前などに1日3セット以上) <1>手でつぶせる軟らかなペットボトルをくわえる <2>息を思い切り吸い込み、一息でペットボトルをしぼませる <3>息を強く吹き込んで一気にペットボトルを膨らませる 【ポイント】 肺活量を増やし、嚥下機能を維持、向上させることを目的とする。 「最初は、水やお茶で使われる比較的軟らかい300ml程度のペットボトルから始め、大きなサイズへとハードルを上げていくのが理想です。ただし、血圧が高い人は主治医に相談してから行なうようにしてください」
カラオケも効果的!『赤いスイートピー』や『Forever Love』を歌って飲み込む力を維持しよう
このほか「のどトレ」のひとつとして西山医師が推奨するのがカラオケによる「ハイトーンボイストレーニング」だ。 「嚥下と発声はほぼ同じ筋肉を使っており、カラオケは飲み込む力を維持するうえで非常に有効なトレーニングです。できるだけキーの高い曲を歌うのがポイントで、松田聖子さんの『赤いスイートピー』やX JAPANの『Forever Love』にチャレンジしてみましょう」 筋肉は一般的に約6週間かけて成長するため、毎日コツコツと行なえば、次第にのどの筋力がアップするという。 「脳卒中がきっかけで体が弱り嚥下機能が低下、食が細くなった70代の女性患者さんに自宅でのどトレを続けてもらうと、徐々に食べられるようになり体力が回復しました。入院先では『余命わずか』と思われていましたが、それから10年、80代の今もお元気です」 誤嚥を防ぐには、食生活や食習慣を見直すことも必要だ。 「ご飯やおかずを口の中いっぱいに頬張って食べる方、テレビなどを見ながら食事をする『ながら食い』の習慣がある方は要注意。嚥下処理が追い付かない、或いは不十分で誤嚥につながりやすくなります。 また、誤嚥を心配して上を向いて水分を喉に流し込むのは逆効果です。のど仏が開き、誤嚥を招きやすくなるので絶対にやめてください。水分補給時の誤嚥を防ぐなら、お猪口でちびちびお酒を飲むような『うなずき嚥下』が理想です」 食べ物では、「パサパサ」して飲み込みにくいカステラ、「ポロポロ」して器官に入りやすい鶏そぼろ、「ペタペタ」でのどに貼りつきやすい板のりやかまぼこにも気を付けたい。 「新米の美味しい季節ですが、ご飯(白米)でむせやすい人は、適度にとろみがある生卵や、とろろなどをかけて食べるのもよいでしょう」 嚥下力の低下は自覚症状がないまま進行することが少なくない。生涯、美味しくものを食べて、健康的な暮らしをするために、のどの筋力強化は不可欠だ。 ※週刊ポスト2024年11月8・15日号