ふるさと納税「日本一」都城市の驚くべきブランド戦略…人気の秘密は“絞る”こと
事業者も「身銭を切る」
都城市は妥協せず地元の反発に対し、市長が返礼品の特化にゴーサインを出し、現場が根気よく説明しました。 説明のポイントは、次の2つでした。 肉と焼酎、この2つは他の自治体が真似できない特徴であること 都城市全体の知名度が上がることで、(最終的には)他の商品にも貢献できること 市が目指した「ふるさと納税による知名度アップ」を実現させるためには、まずは返礼品で話題になる必要がありました。 魅力的な返礼品を打ち出すため、都城市だけで考えるのではなく、事業者と一緒に考えました。 最初に協力してくれた当時のJA都城の担当者とは、例えば「牛1頭分」「焼酎1年分」など、かなりインパクトのある返礼品を企画して話題になりました。 そして2014年度には、ふるさと納税の寄付額が前年比約50倍の5億円を超え、一躍注目を集めるようになりました。 こうした前向きな兆しが出てくると、少しずつ主体的な事業者が集まってきます。そのタイミングで2016年4月、返礼品を提供していた民間の事業者らが「都城市ふるさと納税振興協議会」を設立しました。 一般的に、この手の協議会では自治体が補助金を出して運営することが多いのですが、事業者が自主的に参加していることもあり、市の補助は0円です。 それどころか事業者がふるさと納税の返礼品を提供することで得る委託料の2%を拠出し、活動費にしているのです。つまり事業者は身銭を切っているのです。 その予算額は2022年度で約1億6000億円。この半分をPRに活用し、事業者自ら都城市のふるさと納税が増えるために知恵を絞っているのです。これで事業者主体の持続可能な仕組みができました。 企業でいうと、自社だけではなく、取引先と一緒に商売を大きくする取り組みと言えると思います。 返礼品を肉と焼酎に絞ったこと、特徴的な商品つくりをしたこと、主体的な事業者を集めたこと、そして協議会を作って自律自転できるようにしたこと──。 これらの結果、都城市は、ふるさと納税10年連続寄付額TOP10入りし続けています。 そして注目すべきは、都城市のふるさと納税額194億円(全国の1.73%)のうち60億円超が、肉と焼酎以外だということです。つまり、市のふるさと納税の知名度が上がる事で、他の商品にも貢献がある事を実現しているのです。
中尾隆一郎