師匠と弟子の関わり方について軽妙に語る柳家花緑さん（右から２人目）と弟子の柳家勧之助さん（右端）＝大津市大石龍門４丁目・寿長生の郷

　先月12日に80歳で死去した著述家松岡正剛さんが深く関わり、滋賀の潜在力を多角的に掘り起こすプロジェクト「近江ARS（アルス）」のイベントが大津市大石龍門4丁目の和菓子メーカー叶匠壽庵（かのうしょうじゅあん）・寿長生（すない）の郷で開かれ、県内外からの参加者約50人が、湖国の歴史文化や新たな価値観に思いをはせた。 【写真】滋賀の視点で新たな価値観考える近江ARSの活動風景 　近江を舞台に、これまでとは違う日本の可能性を探ろうと3年前から続いている。今回は「師匠と弟子」をテーマの一つに掲げ、落語家の柳家花緑さんらが人を導く意味などについて語った。 　弟子の柳家勧之助さんとともに登壇した花緑さんは、祖父で師匠だった五代目・柳家小さんの「これでいいと思ったら噺（はなし）は死ぬ」との言葉を紹介、「自分を奮い立たせるため、常に芸の新鮮さを保つ工夫が必要」と軽妙な語り口で指摘した。 　そのうえで「弟子に何を言うかではなく、自分がどうあるかを見せ続けることが重要」と、教える側の覚悟にも言及した。 　松岡さんへの追悼の言葉もあり、文芸評論家の安藤礼二さんは「個性的な人だったが、あえて個性をゼロにしていろんな人の考えを組み合わせ、無限の結合・表現に変えていける人だった」と、多彩な仕事ぶりをたたえた。