材料の"硬さ"を手軽に調べられるツールがあるって知ってた?
工具や金属などの硬さを調べる手段は欲しいけど高価な硬度計は買えない……という人にちょうどいいのが、ツボサンの「硬度チェック」(MA00600)です。工具や文具、スマホのガラスフィルムなど、気になるものをいろいろ測ってみました。 【もっと写真を見る】
材料の硬さを知りたい場合、素材ごとの硬さの傾向を調べ、それを参考にすることがよくあります。例えば、木材であれば木の種類でおおよその硬さがわかりますし、金属ならアルミより銅が硬く、銅よりも鉄が硬い、といった知識で比較できます。 ただし、わかるのはあくまで傾向だけ。木材では状態によって硬さは変わりますし、金属も合金かどうか、焼き入れしてあるかで変わってくるからです。 AとBのどちらが硬いか、というのであれば、2つを擦り合わせて傷が付かなかったほうが硬い、とわかります。しかし、2つが離れた位置にあると直接擦り合わせることができず、比べようがありません。 ●硬さってどうやって調べるの? こういった材料の硬さを調べられる計器として使われるのが、硬度計です。ちょっと探してみると、プラスチックやゴムなどの柔らかい材料用のもので、数千円~数万円。金属など硬い材料用のものでは数万円~数十万円とかなり高価で、気軽に入手できる価格ではありませんでした。 欲しくないわけではないですが、ぶっちゃけ、硬さがわらないと困るシーンはほとんどないので、硬度計がなくても困りません。とはいえ、鋼に焼き入れをして適切な硬さにしたかったりしますよね。ほら、ナイフとか自作してみたいじゃないですか! そんな、硬さを調べる手段は欲しいけど高価な硬度計は買えないという人にちょうどいいのが、ツボサンの「硬度チェック/MA00600」(実売7000円前後)です。今回はこちらをお借りして試してみました。 ●硬さの違う6本のヤスリで硬さを識別 硬度チェックの中身は、6種類のテスター。このテスターの実態はほぼヤスリそのものです。テスターの硬さはHRC 40~HRC 65まで、5刻みで6本用意されているので、この範囲の硬さがチェックできます。 使い方は簡単。テスターで材料をこすり、傷が付いたらそのテスターより柔らかく、傷が付かなかったらテスターより硬いとわかります。このあたりの調べ方は、鉱物や宝石の鑑定で有名なモース硬度の調べ方と同じですね。水晶が7で、ダイヤモンドが10のやつです。 傷を付けるように擦りますが、ヤスリがけするわけではないので、強い力をかけたり、大きく前後に動かす必要はありません。軽く押さえて前後に動かそうとするだけで十分です。これで引っかかりがなく滑るようなら、テスターよりも硬い証拠。逆に、引っかかりがあって動かしにくいと感じたら、柔らかいと判断できます。 例えば、HRC 50のテスターでは滑る(傷が付かない)けど、HRC 55のテスターでは引っかかる(傷が付く)となったら、その材料の硬さは50~55の間だとわかります。正確な数値ではなく、あくまで「このあたりの値」ということまでしかわかりませんが、多くの場合これで十分でしょう。 詳しい使い方はツボサンの公式チャンネルで動画が公開されているので、そちらを参考にしてもらうとわかりやすいです。 なお、工業材料などの硬さを示す指標はテスト方法によってさまざまな単位があります。本体に書かれている単位「HRC」は「ロックウェル硬さ」のうち、荷重150㎏をかける測定方法によるもの。工業材料用として一般的に使われる形式は「ロックウェル硬さ」のほか「ビッカース硬さ」などがあります。ケースの内側や、ツボサンの製品ページに「ビッカース硬さ」への変換表があるので、ビッカース硬さを知りたい場合には、こちらを参考にしましょう。 テスターが通常のヤスリと違うのは、先端が曲げられていること。これにより、材料の角だけでなく、平らな面にも無理なくテスターをあてることができるようになっています。 ●工具や文具の硬さを測ってみた せっかく大まかな硬度がわかるのですから、色々試してみましょう。 まずは手元にあった工具、モンキーレンチから。工具の表面がメッキされてる気もしますが、気にせず試してみましょう。 思っていたよりも硬く、HRC 50~55。柔らかいと、力をかけた時に負けて凹んじゃいますからね。 続いて、文具のハサミ。 HRC 55~60。一般的な包丁がHRC 56~58くらいのようなので、ほぼ同じですね。切る対象が不明なので硬くはできず、かといって、気持ちよく切るには硬さが必要となるため、そのバランスをとった硬さがこれなのでしょう。 ちょっと検索してみたところ、理美容ハサミのような単用途でプロ向けのものだと、HRC 60以上もあるみたいです。(参考:ハヤシシザース) ●スマホのガラスフィルムの硬さを測ってみた 実はこの硬度チェックを試したかった理由のひとつに、ガラスの硬さを確認する方法がないかというのがありました。具体的にはスマホのガラスフィルムです。パッケージに「9H」とかあるのを、どこまで信じていいのか気になっていたのです。 この「H」の値は引っかき硬度で、鉛筆法によるもの。その名の通り、BとかFとか3Hとかの鉛筆の芯で引っかき、傷が付くかで硬さを調べる方法です。 専用の硬度試験機とかもあるのですが、もっと手軽にツボサンの硬度チェックで確認できないかな、と思ったわけです。とはいえ、硬度の測定範囲が範囲外だと調べようがありません。 そこで、ガラスのビッカース硬さを探してみたところ、種類によってだいぶ変わりますが、だいたいHV 540~780くらいのようです。HRCだと50~60くらいですから、3段階くらいなら、この硬度チェックでも測れなくもなさそう。 ってことで、先の写真にある3HのPETフィルム、9Hと10Hのガラスフィルムの3種類で試してみたところ、H3のPETフィルムはさすがに柔らかく、HRC 40の赤でも簡単に傷が付きました。 9Hと10Hのガラスフィルムはかなり硬いようで、HCR 65の黒でもツルツル滑って傷が付きません。悔しいので、テスター先端のとがったところでゴリゴリやってみたのですが、やはり傷が付きません。すごいな。 これはもしや、ガラスには傷が付かないのでは?と思い、柔らかそうなフォトフレームに使われていたガラスでテスト。すると、HRC 55の緑では傷が付きませんでしたが、HRC 60の青で傷が付きました。 ガラスへのテスト方法として正しいかはわかりませんが、スマホ用PETフィルムより普通のガラスが硬く、普通のガラスよりスマホ用ガラスフィルムが断然硬い、というのは間違いなさそうです。 なお、人工的に作られた宝石で非常に硬度が高い「合成ルビー」(HV 2000程度)で引っかいてみたところ、10Hでも簡単に傷が付きました。ガラスフィルムは硬いとはいえ、過信してはダメですね。 ●硬さを調べるのはかなり楽しい 硬さを調べる用途は限られてしまいますが、軽くこするだけで大まかな硬さがわかるという点で、ツボサンの「硬度チェック」(MA00600)は便利。 価格も手が出せる範囲なので、とくに金属の硬さを調べたい場合に頼りになるでしょう。 ●お気に入りポイント● ・こするだけで大まかな硬さがわかる ・6本セットで測れる範囲が広め ・先が曲がっていて使いやすい この記事を書いた人──宮里圭介 PC系全般を扱うフリーランスライター。リムーバブルメディアの収集に凝っている。工作が好きだが、最近あまり時間が取れないのが悩み。 文● 宮里圭介 編集●こーのス/ASCII