サトウキビの万能性学びに 瀬戸内町の農家で実習 東京農大・津賀由匡さん
農業実習の受け入れは、同大が2006年に瀬戸内町、16年に喜界町と包括連携協定を結び、熱帯アジア原産のヤムイモ=大薯(だいじょ)の利活用方策や調査研究などを進めていることが縁。奄美ヤムイモ会が大学との窓口となり、受け入れ先を調整して、各農家と学生をつないだ。同大の「ファームステイ」は2年次からの選択科目で、実習期間は3週間。 津賀さんは千葉県出身で、動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」で配信されていた家庭ごみや産業廃棄物などの再生利用に興味を持ち、文系から同大へ理転。実習先に叶さんの農園を選んだのも、「バガス」と呼ばれるサトウキビの搾りかすが堆肥や紙などに利活用されていることから植物のイロハはもとより、砂糖の生産作物だけではない「万能性」を学ぶためだという。 実習は4日に始まった。当初は台風10号の接近、通過後で大気の不安定な状態が続き、雨で作業が思うように進まなかったそうだが、風で折れたサトウキビの作付けや飛ばされた鳥獣被害対策の柵の修理など、自然相手の〝リアル〟な農業を体験。天候回復後は、ドラゴンフルーツの植栽やタンカンの剪定(せんてい)の他、奄美特有の赤土でも無施肥・無農薬で作物が育つ土壌改良の方法などを教わっているという。
津賀さんは「農業に天候はつきもの。作業が進まないのも、想定外の柵の修理も、すべて含めて『農業』だと肌で学んだ」と笑い、叶さんの農法について「大学の教えとは真逆。叶さんは(土壌を修復しながら自然環境の回復を目指す)『環境再生型農業』を机上でなく畑から学び、エビデンスがなくても経験をフル活用し、(農作業の軽減など)効率を高めている」と分析する。 奄美大島での農業の印象を「島は未利用地が多く、収穫後の切り株や根を耕さずに残す叶さんの農法であれば、地域課題の解消とともに農業の可能性も広がるように思う」と語り、実習が進む中で「自分の畑を持つことへの意欲が湧いた」と津賀さん。実習は25日で終えるが、サトウキビの収穫に合わせ、11月に再び島を訪れる予定だ。 指導する叶さんは、津賀さんの成績を「来てくれるだけで100点」と茶目っ気を交えて採点。「奄美で農業実習の受け入れを継続させることが大切であり、また島の子どもたちの職業選択に『農業』が加わるような取り組みを今後考えていく必要がある」と、離島農業の未来を見据えた。