「泣けるほど頑張るラガーマン」トンプソン”引退マッチ”に1万4599人。なぜ彼はこれほどまでに愛されたのか?
トンプソンとロックを組んだ、ゲームキャプテンのマイケル・ストーバークが粋な計らいだったことを明かす。そして最後にマシレワがトライを決めた後も、再びコンバージョンキックが託された。今度は右タッチライン際からの難しい角度。コースはまずまずだったものの距離が足りなかったキックが、トンプソンにとって最後のプレーとなった。 「最後の試合、たくさんのみなさんが来てくれて、仲間と一緒にいい結果が出せていいメモリーになりました。一緒にプレーしてくれた選手、コーチングスタッフ、ファンの皆様、サポートしてくれた家族には感謝の気持ちでいっぱい。言葉にならないくらい感謝しています」 今後は母国ニュージーランドへ戻り、生まれ故郷のクライストチャーチの近郊で牧場を経営する第2の人生を思い描いている。試合後に引退セレモニーが行われ、場内を一周しながら「トモさん、ありがとう!」と熱いエールを受けたトンプソンは「ちょっと寂しいね」と神妙な表情を浮かべた。 「信じられないくらいたくさんの応援をもらえた。16年も日本でプレーして、すごく幸せだった。いまからは新しいチャレンジ。楽しみもあるけど、緊張もある」 最後まで涙はなかった。すべてを燃焼させた愛すべき鉄人は記者会見を終えると、出入り口付近で立ち止まって「ありがとうございました」と頭を下げ、晴れやかな表情で楕円のボールに別れを告げた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)