コメを食べる犬は「ぜいたく品」多くが殺処分で激減…戦後に“全ての柴犬の父”となった名犬 「日本中の愛犬家が素晴らしさに驚き、とりこになった」
風化する功績
樋田さん宅には、愛犬家仲間から贈られた中の石像と石碑がある。樋田さんの義理の娘珠紀さん(81)によると、樋田さんが1989年に亡くなった後も、「中の話を聞きたい」と家を訪ねてきて石像を見ていく人がいた。しかし「最近は来ない。時代がたったからね」と珠紀さん。
日本犬保存会によると、2023年に同会へ登録された柴犬は1万8346頭で、日本犬登録数の97%を占める1番人気。ただ、繁殖させる人は高齢化などにより減少傾向だ。中沢さんは、柴犬の保存と復興に果たした信州の功績を知ってもらうことが、「繁殖に関心を持つ愛犬家を増やすことにつながれば」と話した。
柴犬とは
【柴犬】日本に昔からいた小型な犬の呼び名の一つ。明治維新後、多くの洋犬が流入して在来種との交配が進むと、大正から昭和初期にかけて日本固有の犬を保存する機運が高まった。日本犬の特徴をよく残した小型の犬は柴犬として保存、繁殖された。1936(昭和11)年、柴犬は国天然記念物に指定された。現在の柴犬のルーツは、36年に島根県で発見された雄「石」。「中」は石のひ孫。