サービスの売却どころか完全終了もあり!? アメリカの「TikTok禁止法」超速解説
――仮にTikTokが非中国企業に売却されるとして、今後どのような障害があると考えられますか? 高口 最も大きな障害は中国の法律になります。どの国にも軍事や先端技術に関する〝輸出制限目録〟があり、中国にもそれと同等のリストがあります。 バイトダンスの場合は彼らが開発したアルゴリズム技術そのものが中国政府の輸出制限目録に指定されており、中国企業であるバイトダンス以外がそれを運用することは認められていません。 つまり、バイトダンスは民間企業ですが中国政府の許可なしではTikTokの非中国企業への売却は行なえないのです。なので、提訴の結果次第では全米からTikTokが消滅することが濃厚となっている状況です。 ――中国では今回のTikTok騒動はどのように報道されているのでしょうか? 高口 大部分がバイトダンスが〝個人情報の取り扱いでやらかした〟というストレートニュースで、この件に関してネットでコメント欄が炎上するといったこともありません。 ただし、これがTikTok問題を起点とした〝アメリカでの中国政府批判〟となると、また報道のされ方も変化してくるでしょう。 ――ところで、アメリカ以外でTikTokを禁止しようとしている国は? 高口 すでにインドではTikTokは禁止されています。20年に中印国境での両軍兵士の殴り合い事件が発生したことで、インド政府はTikTokやWeChatをはじめとする中国企業が運営する170個以上のアプリを禁止にしました。 ――現在、アメリカでは多くの若者がTikTok禁止に反対していますが、インドでは禁止による混乱は? 高口 もちろん反対はありました。しかし、ほとんどのインフルエンサーがTikTokのようなショート動画を投稿できるYouTubeショートやインスタのリールに移行。ファンもそちらへ移り、TikTok消滅による混乱はありませんでした。 ――最近はEC関係で中国企業が世界的に勢力を拡大しています。今後、第2、第3の中国アプリ禁止問題が発生する可能性は? 高口 あります。根本的な問題は中国企業が海外進出する際のやり方です。中国企業は海外進出する場合、まず現地のプラットフォームを買収します。 例えば、バイトダンスはアメリカのショート動画投稿アプリ『Musical.ly』を買収することから全米進出をスタート。ここでアメリカ企業であるMusical.lyを〝運営本体〟としておけば、今回のような禁止騒動にはならなかったでしょう。 多くの企業が利用するビデオ会議アプリ『Zoom』も開発拠点は中国ですが、アメリカ企業なので問題にされることはありませんから。 ――アメリカでのTikTokの存亡は、中国政府の政治判断次第かと! 取材・文/直井裕太 写真/AFP/アフロAP/アフロ