サービスの売却どころか完全終了もあり!? アメリカの「TikTok禁止法」超速解説
今年4月、アメリカの上院で人気動画投稿アプリ『TikTok』の利用禁止につながる法案が可決。これによりアメリカで約1億7000万人に利用されるTikTokそのものが全米から完全に消滅するという事態も!? 中国発の世界的人気アプリの抱える問題を解説です! 【写真】『TikTok』と『抖音』の違い * * * ■TikTokが1年後に全米から完全消滅!? 4月23日、アメリカの上院は動画投稿アプリ『TikTok』に関する全米での利用禁止につながる法案を可決。そして5月7日には、この禁止法の差し止めを求めてTikTokの運営会社である中国企業のバイトダンスがアメリカ政府を提訴した。 最悪、アメリカ国内からTikTokが消滅することになる今回の騒動のいきさつを、中国のIT企業に詳しいジャーナリストの高口康太さんにお聞きします。 ――報道では〝アメリカ国民を国外の敵対勢力が管理するアプリケーションから保護する法律〟とザックリな解説ですが、具体的にどのような問題点があるのでしょうか? 高口 まず問題となっているのは、アメリカ国民の個人情報などを含めたデータの管理です。データはバイトダンスの本国である中国側からもアクセスできる状態になっており、トランプ政権時代の2020年8月に「TikTok禁止の大統領令」が公布されました。 これに対しバイトダンスは差し止めを求めて提訴し、バイデン大統領政権となった21年6月に〝法的根拠が弱い〟として、大統領令は撤回されました。 その後、バイトダンスはすべてのデータ管理・運用を中国企業のアリババクラウドから、アメリカ企業であるオラクルのクラウドへ移行。これにより中国本国からTikTokに関するデータへのアクセスができなくなりました。 その後もバイトダンスは2000億円投資して「プロジェクト・テキサス」という各種データを管理する独立した組織を社外に新設し、会社的に健全なことを主張してきました。 ――なら、21年の時点で一件落着だったのでは? 高口 しかし今年1月、アメリカの『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の調査で、TikTokユーザーのメールアドレスやIPアドレスなど各種データの中国本国との共有が発覚します。これをきっかけとしてアメリカ政府内で一気に〝TikTok禁止〟の風向きとなりました。 このままだとバイトダンスはTikTok事業の非中国企業への売却、それが実現できない場合は1年以内に全米でアプリ配信が禁止となります。そして、5月7日にバイトダンスはアメリカ政府の提訴に踏み切ったのです。 多くの中国企業はアメリカ国内で何かしらの嫌疑があったら、普通はクリアになるまでおとなしくしているものです。 しかし、バイトダンスは中国のベンチャー企業ならではの〝失敗を恐れないノリ〟という部分がいまだに強く残る体質で、ずさんなデータ管理を続けつつ、さらにアメリカでEC事業の拡大などを行なっていました。こういった面も悪目立ちし、禁止法が可決される要因のひとつになったといえるでしょう。