問題指摘相次ぐ「あいちコミュニティ財団」は信頼を取り戻せるか
市民や企業から寄付を募り、地域で活動するNPOなどに資金提供する「コミュニティ財団」。その全国組織である「一般社団法人全国コミュニティ財団協会」(岡山市北区)には、準備中の財団も含めて30余りが加盟団体に名を連ねています。 財団といえば、大企業や富豪が私財を投じて社会貢献をするというイメージがあるかもしれません。「コミュニティ財団」は地域の人が少しずつ資金を持ち寄って作る財団です。住民が自らの手で課題に取り組み、地域を良くしていくしくみとして期待されています。 しかしここ数年、愛知県でコミュニティ財団をめぐる不祥事や問題の指摘が相次ぎ、その信頼が大きく揺らいでいます。今年から本格的に制度化された「休眠預金」活用の受け皿とも見られているコミュニティ財団ですが、公的な資金を預かる団体としてふさわしい運営がなされているのでしょうか。
パワハラで代表辞任、寄付金「流用」報道も
不祥事や問題の指摘が相次いでいるのは、「あいちコミュニティ財団」(名古屋市東区)。2013年に653人の発起人から950万円を超える寄付を集めて一般財団法人として設立されました。翌14年4月には愛知県から認定を受け「公益財団法人」となりました。以降、現在までに7000万円を超える寄付金を集め、愛知県内で外国籍住民やひとり親家庭の生活支援、引きこもり状態にある人の就労支援など、公的な支援が届きにくい活動をする60以上の事業に助成してきました。企業と連携した助成プログラムや子ども向けの「寄付の教室」、遺贈寄付相談センターの開設など、これまであまり例のなかった事業にも次々と取り組んだため、創設者である当時の代表理事は「若手社会起業家」としてメディアからも注目を集めました。 しかし17年、最初の問題が発覚します。財団を退職した職員が未払い賃金(残業代)の支払い請求とともに、当時の代表理事からパワハラを受けていたと労働基準監督署に訴えたのです。 訴えを受けて、調査した労基署は「財団が職員と労使協定を結ばず残業をさせ、割増賃金の支払いもしていなかった」などと指摘。これを受け、財団は組織改革委員会を設置して関係者のヒアリングを行い、同年11月末には「信頼を基盤とする公益財団法人として根幹を揺るがす事態を招いた」として代表理事と全理事に辞職勧告を提案。12月初めには全員が辞職し、新たに榎田勝利・愛知淑徳大名誉教授が代表理事に就いて新体制が発足しました。 ただ、こうしたパワハラの事実を含めた経緯は、被害者への謝罪や寄付者への説明より先に、地元・中日新聞の報道で公になりました。このため、寄付者をはじめとした関係者の財団への不信感は一気に膨らみます。集めた寄付金の分配を通じて、NPOなど地域の団体の運営のアドバイスや管理をする立場にあった財団が、ずさんな運営をしていたことも厳しく問われました。 そして、こうした不信感は財団の収入激減につながります。例えば2016年度に1500万円以上あった寄付金は17年度には570万円あまりに減ってしまいました。18年度から募集している「あいち・なごや・つながる基金」への寄付も、わずか17万円ほどしか集まっていません(4月3日時点)。しかし、職員の人件費や事務所の維持費はかかり続けるため、18年秋には運営費が枯渇してきました。こうした中、財団は、本来は「助成事業に使う」として受け取っていた500万円の寄付金から、事務所の家賃や光熱費を支払います。これが「寄付金の流用に当たる」として、今年4月上旬に地元紙が報道。財団はおおむね事実と認め、公式サイトに謝罪文を掲載しました。