問題指摘相次ぐ「あいちコミュニティ財団」は信頼を取り戻せるか
総入れ替えが裏目、流用は「グレー」の見方
役員を総入れ替えしてまで立て直しを図っていたのに、なぜこのような泥沼にはまってしまったのでしょう。 財団の設立当初から評議員として関わり、この4月に常務理事となった戸枝陽基・社会福祉法人むそう理事長は「運転資金の不足は予想できたのに、具体的な対策をしなかった理事・評議員の責任」と認めます。 その上で「最初の不祥事の結果、以前の経緯が分かるメンバーが全て辞職し、まともな引き継ぎもありませんでした。緊急事態の中、1年前に役員を引き受けた人たちは公益財団法人に関する法律を読み込む時間すらなかったのも事実です」と釈明します。こうしたゴタゴタの中で、寄付金を運営費に充当することについて、職員から理事会や評議委員会に提案されました。「反対の声を上げる人もいましたが、結果的に承認された」と戸枝さんは説明します。 実は、今回の寄付金の「流用」は、直ちに違法と言えるものではないようです。財団などの公益法人は、寄付金を助成などの公益目的事業と運営費に使う割合をあらかじめ規定で決めて、その割合通りに使用するのであれば問題はないからです。 公益法人の制度に詳しい国立民族学博物館の出口正之教授も「一時的に資金不足を補うために、会計間で賃借することは、推奨すべき方法ではないにせよ、大きな問題とするほどのことではありません」との見方を示します。出口教授は「公益法人は年会費収入や年に1度の財産運用収入に依存していることが多い。一方で人件費などは毎月発生しますから、健全な経営をしていても期中で資金ショートを起こす事態が生じることはあり得ます。こうした実態を踏まえることなく、国の委員会が公益法人認定法の解釈を変更してきた結果、何が正しいルールなのか分かりづらくなっていることが問題です。公認会計士や税理士でも、公益財団法人の会計について正確に理解している人はほとんどいないのではないでしょうか」と言います。 しかし、同財団には経理の規定自体がありませんでした。規定がなくても公益財団法人としての認可には問題がありません。ただ、経理規定がない中でどういった基準で寄付金の用途を決めていたのか、財団の運営の透明性にさらなる不信感を持たれたことも、財団が再三大きく報道される事態につながっていると言えそうです。 実は、財団は報道が出る前の18年度中には経理規定を整えるとともに、理事や評議員による持ち出しの資金で問題の運営費を埋め合わせていました。 「一度は寄付金から借用することになってしまいましたが、3月の決算までに財団内部で間違いに気づき、500万円を寄付していただいた方へも経緯を説明し、了承いただきました。今回の件は違法とは言えないと考えていますが、寄付者への説明が事後報告になってしまったことは大変申し訳なく感じています」と戸枝さんは陳謝します。