『潜入兄妹』すべてが段取りよく回収される最終回に 続編を匂わせる新たな“依頼”も
賢太(伊藤あさひ)が密告したことにより、潜入捜査官であることが朱雀(白石聖)に知られてしまう貴一(竜星涼)と優貴(八木莉可子)。賢太は朱雀に撃たれて重傷を負い、そして朱雀は部下を連れて現れた信濃(篠田麻里子)によって射殺されてしまう。12月14日に放送された『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』(日本テレビ系)は最終話。前回の段階ではまだかなりの謎が残されていたわけだが、今回は最終話であり“一掃作戦”。文字通り、幻獣と九頭龍の両組織の壊滅から兄妹の父の死の真相まで、すべてが段取りよく回収される点で、非常に見応えのあるクライマックスとなったのではないだろうか。 【写真】鳳凰(藤ヶ谷大輔)と睨み合う貴一(竜星涼) 貴一と優貴は、自分たちが潜入捜査官であることを信濃に明かし、幻獣と、そして信濃の父である熊野(川瀬陽太)を殺した九頭龍を壊滅させるために手を組むことを要求。閻魔帳を渡すことを条件に、九頭龍と鳳凰(藤ヶ谷太輔)を直接引き合わせる手筈を整えさせる。一方で、“もうひとりの内通者”の存在をすでに突き止めている幻獣の幹部は、その取引に乗じて九頭龍の組織を一網打尽にする罠を仕掛けることを計画。貴一たちは、それをさらに包囲するという作戦を警察側と立て、ハコの仲間たちに本当のことを明かした上で協力を依頼するのである。 二重三重にも折り重なった罠と騙し合いは、このドラマの真髄ともいえる部分。それが最後まで崩されなかったことこそが成否を分けた最大の要因であろう。これまで幻獣の“始末屋”として暗躍していた櫛田(フェルナンデス直行)が“もうひとりの内通者”であることが判明する中盤も含め、一連の作戦決行のプロセスはかなりのスピード感をもって描写され、騙し合いを重ねても余計な複雑さを一切排除した明瞭なかたちにまとめられる。そこに最高のアクセントとして加えられたのは、やはり青龍(桐山漣)と貴一の決闘であったことは間違いない。 序盤でようやくバックグラウンドが明らかになった青龍と鳳凰。それがあってこそ、青龍の“兄弟愛”を思わせる最期が成立するわけで。また、序盤の朱雀は貴一を守るかのように、そしてアジトに踏み込んできた警察から逃れて古いアパートで迎える白虎(黒谷友香)と玄武(吹越満)は自分たちのこれまでの人生を噛み締めるようにして、それぞれ最期を迎える。幻獣の幹部たちが死に際に見せるこれらのドラマティックは、いずれも香港ノワール的な空気感が立ち込めており一貫している。 ハコの仲間であった泰造(徳井優)が九頭龍として現れる終盤のどんでん返しには、後々で本当の九頭龍から雇われただけであるというもうひとつのどんでん返しが重ねられる。その正体が入間(及川光博)であり、結果的に彼が貴一たちの父を殺した張本人であると判明する。もっともここに関しては、前回突如として見せた入間の不穏な表情を考えれば必然的な展開であったかもしれない。むしろ、入間が黒幕であると気付く直前の、貴一と鳳凰の対峙シーンにこそ、このドラマの最大のカタルシスは存在した。貴一が父の仇を討つために幻獣に潜り込んでいたことを知った鳳凰が見せる一瞬の表情の変化。彼はそこで、自分と貴一を重ねていたにちがいない。 さて、ラストで拘置所に入れられた鳳凰が、同じ拘置所に連れてこられた入間に刑務官の協力を得て復讐を果たす一連を見ると、彼の組織は完全には壊滅していないことが窺える。一方で、兄妹のもとには新たな潜入の依頼が舞い込んでくる。これらはまさしく続編のための下準備といったところだろう。そういえば、ドラマが終盤戦に入ってからはすっかり『占拠』シリーズとの繋がりを感じさせる要素がなくなっていた。もし続編をやるとなれば、本格的なクロスオーバーの実現を期待したいところだ。
久保田和馬