「手取りを増やすつもりはない」と言っているのと同じ…「103万円の壁」で国民民主がハマった自民・財務省の罠
■「宮沢会長のバックには財務官僚が控えています」 そしてその自民党税制調査会のトップに君臨しているのが、党税調会長の職にある宮沢洋一参議院議員だ。 そして注目すべきなのは、前述したインナーのメンバーに森山裕自民党幹事長が名前を連ねているという点だ。つまり総裁に次いで党ナンバー2の立場にあるはずの森山幹事長が、党税調の中では宮沢会長よりも格下の扱いになっているのだ。このことは、極めて重要なポイントなのでぜひご記憶にとどめていただきたい。 そして党税調を理解する上で、もう一点重要なポイントがある。この党税調には、オブザーバーとして財務省と総務省(旧自治省)の官僚が参加しているのだ。 そのことを念頭に置いた上で、以下のコメントに注目して欲しい。 財務省の元キャリア官僚がこう言う。 「そもそも宮沢氏は、元財務官僚であることは間違いないが、主税畑ではない。税制法案は書いたことはないはずだ」 つまり宮沢会長は税調会長ではあるけれども、税制のスペシャリストではないと指摘しているのだ。 元財務省キャリア官僚が続けてこう指摘する。 「今回の『103万円の壁』を巡る、自民党と国民民主党の協議では宮沢会長がある種の抵抗勢力の中心人物として捉えられ、国民世論から厳しい批判が集中していますが、それは少々的外れなような気がします。宮沢会長のバックには間違いなく財務官僚が控えています。それだからこそ、自民党税調は国民民主党の要求に対して徹底抗戦を貫いたのです」 ■「国民民主」と「維新」を両天秤にかけていた 従来だったら、自民党税調は国民民主党の要求など歯牙にも掛けなかったはずだ。しかし先の総選挙で与党が大敗し、衆院で過半数を大きく下回る議席しか獲得できなかったため、事態は一変した。野党の協力無しには、一本の法案も可決することが出来ない状況に追い込まれてしまったのだ。 特に焦点となったのは、秋の臨時国会に提出された今年度補正予算案を成立させるにあたって、どのような形で野党の協力を取り付けるかだった。 年末の臨時国会会期末までに補正予算案を成立させなくてはならないという時間的制約を抱える自民党にとって、協力を取り付ける交渉相手として最も計算がつく相手が国民民主党だったと言える。なぜなら、「103万円の壁」を巡る国民民主党の要求に一定程度応じたならば、補正予算案に賛成することを国民民主党サイドは明言していたからだ。 ところが自民党執行部の交渉相手は、何も国民民主党だけというわけではなかったのである。 「森山裕自民党幹事長は密かに、日本維新の会の遠藤敬衆院議員と接触を図り、協力を取り付けたのです。この11月まで国対委員長の職にあった遠藤議員なだけに、自民党国対族のドンである森山幹事長とはまさに昵懇の仲なのです。森山幹事長は、維新の求める教育無償化の実現を確約することで補正予算案の賛成を取り付けたのです」(大臣経験のある自民党国会議員) つまり自民党は、今年度補正予算案の成立を確実なものとするために、国民民主党と日本維新の会の両党を両天秤に掛けていたのである。