「リアルで演じたらバズっちゃった」『地面師たち』で脚光の“ライフ俳優”が語る壮絶半生
「劇団時代にお礼の手紙をお返ししていたのと同じ気持ちなんです。単に“いいね”を押すだけではなくて、文字として書いてくれているわけだし、意見を寄せてくれたっていう縁(えにし)みたいなものがあるからね。そして人間、褒めていただくのは悪い気しませんもん」
往年の名作にも出演の過去
自然な演技に「本当にその辺にいるおじいさんにしか見えない」とSNSでも注目を集める謎の老俳優。実は映画『八甲田山』『八つ墓村』『翔んで埼玉』『万引き家族』などに出演。ドラマも多数。キャリアは50年超。もともと演劇に興味があり、高校生のときに市民劇団員と出会ったことで学校で演劇サークルを立ち上げ、高校の文化祭と市民文化祭に参加したという。 「そこで反応が良くてね。舞い上がって、役者がやりたいと思った(笑)。最初は小学校、中学校の先生が芝居の楽しさを教えてくれたのが興味を持ったのがきっかけで、今でも先生方と交流あるんですよ。でもね、やっぱりおふくろの顔が見づらくてね。エンジニアやサラリーマンになってほしいと言っていたので……。高校卒業後は東京へ出て、自動車の整備士学校へ入りました」 学校へ通いながら、そしてその後就職したカーディーラーの仕事の傍ら、五頭は劇団に入って芝居を続けた。そして20代中盤、俳優として生きることを決め、劇団『青年劇場』の門を叩く。 「だって人間、人生は一生に一回だから、自分が生きたなって証しが欲しかったんでしょう。まあそのころはそんな哲学的なことまで考えていなかったと思うんですけど、ある意味……そうね、有名になりたいっていう部分もあったのかもしれない(笑)」 劇団では主に学校での公演を中心に全国を巡演。五頭が得意とするさまざまな方言による芝居は、このとき演じた役や各地で触れ合った人から学んだものだという。 しかし40代前半、地方公演中に「どうも歯がぐらつくな」と思って病院へ行くと「左の顎の骨が溶けてる。手術しないといけない」と診断される。 「でも公演が来年まで決まっていたからね、ちょっと先送りにしていたら“ほっといたら骨が折れる”と言われて。それで手術をしたんです」 金属のプレートで顎を補強する大手術を受け、ホッとしたのもつかの間、ある日舞台で大きな声を出したらプレートが折れ、その破片が脳のある場所まで入ってしまったという。 「でもこの破片を取ろうとすると脳に傷つけちゃうから、っていうんでそのままになってます。そうこうしていたら1年もしないうちに胃がんが見つかって。それで手術で胃を半分切ったんだけど、まだ上のほうにがんが残ってるって、2度も手術して。顎と合わせて2~3年の間に8回も手術しましたよ」