なぜ広島の大瀬良は開幕完投勝利&プロ初本塁打を飾ったのか…横浜DeNA今永が分析したライバルエースの凄さと反省点
ベンチから大瀬良の姿を真剣な目で、じっと見つめていたのが、横浜DeNAの開幕投手を務めた今永である。 雨が強くなった天候の変化に加え、7番からの下位打線だったこともあり、「ぽんぽんと終わらせたい」と不用意にテンポを変えた5回につかまった。1点を守れず大瀬良に同点タイムリーを浴び西川に逆転タイムリーを許した。 5回2失点、93球での降板指令。今後の過密日程と調整不足を考えると妥当な判断で、ラミレス監督は、「今永は悪くなかった。ちょっと球数は多めだったが、2失点だけだし期待通り。相手が大瀬良じゃなかったら勝てる試合だった」と、今永を責めなかったが、若き左腕には、エースとしての反省がある。 「4回までは丁寧に時間を使ったが、5回は、ちょっと投球が淡泊になった。田中さんにストレート(三塁打)、大瀬良さんはバッティングのいい投手ですが、初球をコツンと打たれた。ダメだなと感じた。そこが課題。その失点がなければ5回で降りることもなかった」 そして完投勝利した大瀬良と5回降板した自らを自虐的にこう比較した。 「元々球数は多い方だが、僕は(1イニング)平均18球で、大瀬良さんは、12、13球だった。(9回の)ソトへの四球がなければ、1イニング10球くらいだった。大瀬良さんと僕との目に見える差を開幕戦で見せつけられた。大瀬良さんを参考に、今日の負けを自分の教訓にするためには、(自分に)負けがついてよかったなと思う」 プロ7年目、2日前に29歳になった大瀬良と、5年目、26歳の今永は、わずか2歳違いである。しかも、同じ2年連続2度目の開幕抜擢でありながら明暗が分かれた。その差は、どこにあったのか。教訓を忘れぬためには「黒星」という悔しさが必要だったというのだ。
マウンドを降りてからは大瀬良のピッチングをベンチから冷静に分析していた。 「大瀬良さんの投球フォームや立ち振る舞いから自分との違いを探していた。しっかりと下半身が安定して、再現性の高いフォームをしていた。僕は上と下がバラバラ。大瀬良さんは、力を抜くのではなく、出力を抑え、滑らないようにマウンドを利用していたなと感じていた」 降雨の影響で試合開始は30分遅れた。試合中も雨が降り続けマウンドはぬかるんでいた。大瀬良も、試合後、「ぬかるんでいたのでバランス重視、力を抜いて、低めに集めることを心掛けた」とフォームバランス重視でピッチングをしていたことを打ち明けていた。 シュートを覚え、ピッチングの幅を広げている大瀬良のスタイルは、ストライクゾーンの中でのボールのキレと、精密なコントロールを追求する”究極の打たせて取るピッチング”である。その精度を落とさぬため、ぬかるんだマウンドに対応した「力まずバランスのいいピッチングフォーム」に修正していたのである。 今永は、「1球、1球、精度を上げないと球数は減らない。それは次週(登板)に影響する。真っすぐがいいなら、もう一個、いいボールを早く試合の中で見つけなければならない。(練習試合が少なくて)調整(の時間)が少なかったが、大瀬良さんは、120球近くまで完投して投げている。凄いと思う。純粋に、こういうピッチャーを僕は目指さねばならないと思った。大瀬良さんの投球を見て勉強になった」と、2歳上の広島のエースに最大級のリスペクトを示した。それは裏を返せば、同じエースとして開幕戦で結果を残すことができなかった自らへの叱咤、奮起への約束である。 本当の勝負の結果は5か月先…。 大瀬良も言う。 「僕たちも、この日を待ちわびてファンの方々にいいプレーを届けなければという思いでこの日を迎えた。なんとかいいプレーができた。初めての経験がたくさん続いていくと思うがファンの方々と手をとりあって素晴らしいシーズンにしたい」 無観客というイレギュラーな開幕戦から素晴らしいライバル物語が始まったのである。 今永がオンライン取材に応じている頃、無人のハマスタに、人が周辺に集まることを避けるため、サプライズ演出となった綺麗な花火が打ち上がっていた。