米経済や不安定な市場見極め、追加利上げに慎重な声相次ぐ-日銀意見
(ブルームバーグ): 日本銀行が9月19、20日に開いた金融政策決定会合では、8月の市場の混乱を踏まえて、米国はじめ海外経済や不安定な金融市場の動向を見極める必要があるとして、追加利上げに慎重な声が相次いだ。「主な意見」を10月1日に公表した。
ある政策委員は一定のペースで行わないと利上げが後手に回るビハインドザカーブに陥る状況にはないとし、「金融資本市場が不安定な状況で、利上げすることはない」と語った。別の委員は「当面は海外・市場動向を見守り、金融緩和の一段の調整は不確実性が低下した段階にすることが妥当」と指摘。今後の政策運営は「下方リスクに十分配慮し、データを慎重に確認して進める必要がある」との意見もあった。
会合では、政策金利の無担保コール翌日物金利を0.25%程度で維持することを全員一致で決めた。植田和男総裁は記者会見で経済・物価見通しが実現すれば利上げを続ける考えを改めて表明する一方、金融市場や米経済の不透明感の強まりに警戒感を示し、政策判断に「時間的な余裕はある」と表明。主な意見でも政策委員のハト派的なトーンが目立った。
大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、「追加利上げに総じて慎重な意見が多い。過度な円安一服で追加利上げは急がなくてよいという意見に集約しつつある印象だ」と指摘。円売りでやや反応しているものの、「短観は金融政策に跳ね返るような内容ではなく、市場の反応も限定的」と述べた。為替相場は一時1ドル=144円台前半まで円安が進み、足元、144円を挟む水準で推移している。
コミュニケーション
「主な意見」では、海外経済について、ある委員は米国の経済や利下げペースに関する不確実性が増しており、「わが国の為替や企業業績に負の影響を及ぼす可能性に注意が必要」との指摘もあった。
一方、ある委員は経済・物価が日銀の見通しに沿って推移していく場合、「早ければ2025年度後半の1.0%という水準に向けて、段階的に利上げしていくパスを考えている」と表明。政策金利は「見通しに大きなマイナスの変化がないことが確認できるのであれば、時間をかけすぎず、引き上げていくことが望ましい」との指摘も出た。