難しい哲学が一転しておもしろく感じるプロセス 哲学YouTuberがひもとく、哲学の秘話
たとえばプラトンの著作で、現存する最古の写本は9世紀に書かれたものです。今から1200年ほど前の書物が残っているのは驚きですよね。しかもネット上で無料公開されています。プラトンが生きていたのは紀元前4世紀ですから、今からおよそ2400年前です。プラトン作品の最古の書物は、ちょうど1200年の時を挟んで現代に伝わっているのです。 キリスト教は、アレクサンドリア図書館の焼き討ちなど、異文化にとても非寛容で、破壊するというイメージがあるかもしれません。しかし一方で、古典作品を保存・維持する作業も連綿と行われ続けていたのです。
今でも古代・中世の文学や哲学・科学を知ることができるのは、羊皮紙の利用と写字生の几帳面な仕事のおかげです。貴重な作品を後世へ残すという使命のもとで、伝統を守り続けてきたからです。 ■哲学は人類最高の叡智の結晶!? 哲学史のモデルは、ヘーゲルやヘーゲル主義者、あるいは新カント学派と呼ばれる、19世紀に影響力を持ったドイツの哲学者たちによって発展した哲学史です。 ヘーゲル『哲学史講義』の序文はかなり奮っています。哲学とは、人類の最高の叡智の結晶であるとか、各時代に現れた最大の知性の煌めきを見出すことが哲学史という学問の使命である、などと述べています。
そこでヘーゲルが取った戦略は、1つの理念のもとに歴史を描くことでした。その理念は、絶対理性や精神の自己展開(発展)です。ヘーゲルによって、過去の哲学は単なるコレクションではなく、歴史の重要な1コマという意味を与えられました。 ヘーゲルの哲学史によって、哲学者たちを歴史的に位置付けることはできました。しかしそれと同時に、ヘーゲルは哲学の歴史を「発展」と理解したために、過去の哲学をすでに乗り越えられたものと見なしてしまいました。いわゆる「進歩史観」です。
そういう問題点はあるものの、ヘーゲル以後に哲学史というジャンルが爆発的に盛り上がり、多くの哲学史が出版されるようになりました。 そして現代にいたるまで、哲学史はまったく廃れていません。むしろ哲学という学問の主要な側面としての地位を得ています。哲学史を学ぶことは、決して単なる過去の学説の調査や整理にとどまるものではありません。哲学者たちの新たな側面を切り出す創意工夫にあふれた活動なのです。 ■哲学はなぜ互いに批判ばかりしているのか?