<しゃべってや~>自転車で南極点到達の会社員・大島義史が語る南極生活
自転車で南極点到達の会社員・大島義史さんが語る南極生活 撮影・編集:柳曽文隆 岡本ゆか THEPAGE大阪
ぼく冒険家じゃないです、サラリーマンですから──。2016年1月、神戸市須磨区に住む会社員の大島義史さん(32)は、有給休暇を使って自転車で南極点へ到達するという夢を果たした。もちろん会社や家族と話し合いを重ね、周囲の協力もあってこの夢の実現を果たせたわけだが、その帰国から1年、大島さんは現在、どのようにすごしているのか。同区の自宅を訪ねてみた。
大手輸送機器メーカーで経理を担当
同区の閑静な住宅街、少し勾配のある坂をのぼったが、この坂も大島さんにとってはトレーニングの場のひとつだったと言っていただけあり、撮影機材を持った運動不足の筆者は、のぼるのがやっと。ようやく大島さん宅に到着すると、大島さん、妻の由佳さん、娘の風香ちゃんが出迎えてくれた。 あの南極点到達から約1年と1か月、今はどうすごしているのか?と聞くと「はい、相変わらずのサラリーマン生活です」と笑顔の大島さん。なんと、間もなく新しい家族も増えるそうで、幸せいっぱいの家庭そのものだ。しかし、通された部屋のふすまを開けてみると、あの南極点到達を果たした時の自転車やソリが畳の上に置かれていた。3DKの間取りの1部屋は、完全な自転車の整備部屋のままだった。 大島さんは、大手輸送機器メーカーで経理を担当。これまでも不動産部門や工場の管理部門、国際税務など、様々な分野を担当してきた。そんな中、2015年12月から1月にかけ、夢だった自転車で南極点に行くという旅に出ることができた。しかし、その場へ行くまでが苦難の連続だった。 大学時代、世界初の北・南両極単独歩行横断を果たした大場満郎さんの書籍を見て、南極の真っ白に広がる地平線の写真を見て「南極に行きたい」と思った。そして、後に大場さんに話を聞きに行ったり、一般の人でも南極に行けるツアーなどがあることも調べあげ「大好きな自転車で南極点に行く」という夢の実現に向けて綿密に計画を立てた。
飛行機代だけで1200万円
しかし、飛行機代だけで1200万円もかかり、すべて合わせると約2000万円に。妻の由佳さんも当初は「とんでもない」と猛反対。会社にも「3か月間南極に行きたい」と上司に相談し総務などと話し合ったが、会社側からは「規定ではそれを認めることはできない。あなただけ、特例でそれを認めることはできないから」と通告された。 南極行きを決意してから約5年、その間の上司らは自分の夢の計画を聞くなど相談にも乗ってくれた。そして、大きなプロジェクトを担当するたび「このプロジェクトを成功させて、会社に改めてお願いしよう」と励まされ、仕事もトレーニングもこなしながら、コツコツと南極点到達の夢に向けて頑張ってきた。 そして、由佳さんもそんな大島さんの姿を応援、会社とも「有給休暇の範囲内なら」「ガイドをつけて行くなら」という条件付きで、南極行きの許可をもらい、2015年12月に南極に向けて旅立ち、その約1か月後に、自転車で南極点到達という夢を果たせた。