考察『海に眠るダイヤモンド』8話 玲央(神木隆之介)がもう一人の主人公に!
朝子の面影が残るいづみの芯の強さ
百合子(土屋太鳳)と賢将も、知識を力にしている。二人は論文や資料を集めて「被爆した人が後に妊娠した場合、生まれた子どもに影響は見られなかった」という結論を確認した。10年先、20年先はわからないけれど、それでも子どもを持つ決意をした。一方、進平とリナ(池田エライザ)の子ども・誠は出生届さえ出していない。しかし誠が端島では治療できない病気に罹ってしまい、どうしても健康保険証が必要になり、鉄平が出生届を出す。ここで鉄平が進平の代わりになったのかはわからないが、これをきっかけにリナと鉄平は逃げるしかなくなったのだろう。このタイミングで何らかの知識があればなんとかなったのかはわからない。ただ、あれだけ端島を愛していた鉄平がこんなふうに端島を去ることになってしまったのは、あまりにもやるせない。 8話終盤で、石炭が再び出たときの喜びを語るいづみに「石炭出たんだね、日記にそこまで書いてなかったわ」と言う玲央。その記録さえ残す余裕なく、鉄平は島を出てしまったのだろうか。 45歳で会社を興したいづみの「コンクリートに囲まれた東京を緑にする、そしていつか空から見た日本中を緑にする」という思いは、朝子が端島でやっていたことと直接繋がっている。会社を売却することを発表した際の「やぐらしか(=うるさい)! 文句があるとやったら自分で好きな会社ば作ればよか」の言葉も、朝子の芯の強さを思わせる。鉄平に「裏切られた」朝子が救われるような事実が、最終回で明らかになることを願わずにはいられない。 終盤で登場した、端島に関する8ミリフィルムを所持する古賀(滝藤賢一)は、百合子と賢将の息子なのだろうか。そして鉄平はどうなったのか。謎は残ったまま、最終回が迫る。 ●番組情報 日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS) 脚本_野木亜紀子 演出_塚原あゆ子、福田亮介、林啓史、府川亮介 プロデュース_新井順子、松本明子 出演_神木隆之介、斎藤工、杉咲花、池田エライザ、清水尋也、土屋太鳳、宮本信子 他 音楽_佐藤直紀 主題歌_King Gnu『ねっこ』 U-NEXTにて全話配信中(有料) ●釣木文恵/つるき・ふみえ ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。 Edit_Yukiko Arai
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