考察『海に眠るダイヤモンド』8話 玲央(神木隆之介)がもう一人の主人公に!
鉄平の思いが現代の人々を動かす
現代では玲央(神木隆之介、二役)に借金返済を求めて、いづみの家にまでミカエル(内藤秀一郎)らが押しかける。その様子を見たいづみの孫・星也(豆原一成)は、 「本当に返さなきゃいけないの? お店におかしいとことかないの?」 と玲央に伝える。また、ミカエルの客で「似た者同士」と感じていたキャバ嬢・アイリ(安斉星来)が、風俗勤めを始めてしまうに至って、玲央はとうとう初めて自分から動き始める。 知識は力になる。状況を変える手立てになる。逃げるばかりだった玲央は、星也の言葉をきっかけに逆転の一手を打とうとする。なにより彼を動かしたのは60年前の鉄平の姿だ。日記を通じて知った鉄平の、端島の人々のまっすぐな強い思い。現代でホストクラブに流れつき、おかしな状況には目を伏せて「いつ死ねんのかなって」とぼんやり日々を過ごしていた玲央がミカエルに言う。 「思い切り笑って誰かのために泣いたり、幸せになってほしいって祈ったり石炭が出てほしいって心の底から願ってみたいんですよ」 「鉄平だったらどうしてたんだろう」を実行に移した玲央は、アイリを連れて警察に駆け込み「逮捕してください」と申し出る。アイリに向かって「ごめんね」と呟いた笑顔は今まででいちばん輝いていた。 一方、姉の鹿乃子(美保純)に言われるがまま、いづみ(宮本信子)に認知症のテストを受けさせ、認知症の診断書をでっちあげた和馬(尾美としのり)。けれどここぞというところで和馬はその診断書を破り捨てる。 事前にいづみの秘書・澤田(酒向芳)に企みがバレて糾弾されたこと以上に、和馬の気持ちを揺らしたのはもしかしたら父と母の思い出だったのかもしれない。会社の売却を発表した日の朝、いづみは銀座食堂のちゃんぽんを作って食べていた。それを見て和馬は、自分も端島の生まれであること、父親のつくったちゃんぽんを食べた記憶があることを玲央に話した。さらに、いづみが鉄平でなく父である池ヶ谷虎次郎(前原瑞樹)と結婚した理由を「虎さんが真面目で優しい人だったからよ」と語るのを見ていた和馬。その言葉に、家族の繋がりを思い出したのではないか。 何もかも違うように見えて、「言われるまま協力して実行に移していた」という点で同じだった玲央と和馬。時を超えて、端島の人々の思いが、日々が、間接的に二人を動かした。