農業の「稼ぐ力」向上へ 塩田知事、島民と「ふれあい対話」 徳之島
鹿児島県の塩田康一知事が県民と対話を行う「知事とのふれあい対話」が23日、徳之島町の町生涯学習センターであった。「農業の『稼ぐ力』の向上について~物価高騰等が与える農業への影響と対策~」をテーマに、徳之島、天城、伊仙の3町住民12人が塩田知事と対話。島内から79人が傍聴に訪れ、徳之島の農業や畜産の課題について知事とのやりとりに耳を傾けた。 「ふれあい対話」は塩田知事が地域住民の声を県政に反映させようと1期目から続けてきた活動。今回はサトウキビやバレイショ、タンカンなどの生産者や畜産農家など12人が、自身が取り組む「稼ぐ力」向上対策を報告し、物価高騰による課題について解決策を塩田知事に求めた。 天城町の畜産農家の男性は子牛の販売価格低迷と生産コストの高騰が大きな課題と指摘。「島内で70戸の生産者が畜産をやめたり、頭数を減らしたりしている」として、価格補填(ほてん)制度の拡充や制度資金の返済猶予、牛肉の消費拡大策などを求めた。 知事は、県の畜産振興策で奄美の重要性を示すとともに、「政府には引き続き補填制度への予算確保を求め、県としても支援策を検討している」とした。 農業の後継者不足を懸念する声もあった。 徳之島町の男性は「子どもを大学に行かせても島に戻ってきて農業を継ぐ人がおらず、農地の荒廃が進んでいる」と指摘。天城町のサトウキビ農家の男性は「自分は大学を卒業して親からキビ作を継いでいるが、栽培マニュアル通りにしても生産が追いつかない。キビ作りの新しいマニュアルと周知が必要」と話し、営農体系の改善など意欲のある農家への農業機器購入の支援拡充も求めた。 塩田知事は「資機材の購入については一定条件のもとで支援はあると思う。具体的な取り組みを相談していただければ」と答えた。 このほか、タンカンを栽培する果樹専業農家からは、国の特別天然記念物アマミノクロウサギによる食害対策を求める声があり、知事は「(島が)世界自然遺産に登録され、クロウサギとの共存というのも大きな課題」とした上で、防護柵の設置方法などについて検討が必要との見方も示した。 塩田知事は傍聴に訪れた町民の声にも耳を傾けていた。
奄美の南海日日新聞