中森明菜の「紅白出場」に高まる期待 「再スタートを華々しく見せることに意義がある」音楽評論家スージー鈴木氏
■「紅白」に期待しかない この動きに、「中森明菜の音楽 1982-1991」(辰巳出版)の著書もある人気音楽評論家のスージー鈴木さんは「かなり活動が活発になってきたので、心身ともにいい状態なのかなと期待させますね」と話し、「紅白」復帰を期待するという。 「今年の夏にファンクラブのイベントを行ったり、かなり本人も音楽活動をやる意欲も満ち満ちている感じもします。来年の野外音楽フェスも含めて、本格的に音楽活動をするのであれば、紅白で復帰というのは素晴らしいシナリオなのでは」 シナリオとしては「前回出場から10年でキリもいい」とスージー鈴木氏は言う。 2010年10月から活動を休止していた中森明菜は、14年の紅白にゲスト出演。ニューヨークのレコーディングスタジオから生中継し、翌年15年1月にリリースされた約5年半ぶりの新曲「Rojo -Tierra-」を披露。4年5カ月ぶりの復活を遂げた。 ■中森明菜がどう出てくるか 「中森明菜、10年ぶり紅白出場」。いつ発表があってもおかしくないほど、舞台は整った感はあるが、スージー鈴木さんは「焦点は、どう紅白に出てくるか」だという。 紅白といえば会場のNHKホールからの「生放送」「生演奏」「生歌」という前提に、スージー鈴木氏は中森明菜には「tiny desk(タイニー・デスク)」企画での出演を推す。 「tiny desk」とは、アメリカの公共放送NPRが始めた人気企画で、オフィス内の“小さな机”で行われるライブパフォーマンスだ。
NHKは今春にNPRからライセンスを受けて、9月から「tiny desk concerts JAPAN」(毎週月曜午後11時)を放送している。これまでに藤井風、稲葉浩志、チャラン・ポ・ランタン、小沢健二+ゲスト・スチャダラパーなどが東京・渋谷のNHK本社のオフィス内でライブを行った。 スージー鈴木さんは、「tiny desk」に期待する理由をこう話す。 「『tiny desk concerts』は、本当に職員が働いているオフィス内でやるので、サウンドが加工・修正できないし、爆音にできないし、ボーカルにエフェクトもかけにくいという、まさにリアルな生演奏なだけに、アーティスト自身の腕っぷしが見られます。そこで、中森明菜は少数精鋭のジャズバンドとともに、例えば『TATTOO』をサラリと歌い、歌唱後に小泉今日子が花束を持って現れる!(笑)」 ■中森明菜待が復活する意義 1982年にデビューし、「花の82年組」と言われた同期からの祝いの花束は夢物語かもしれないが、中森明菜の紅白待望論には、そこに意義があるのではないかと、スージー鈴木さんは言う。 「手を変え品を変え、時代の最先端を歩んできた小泉今日子に対して、ブランクもある中森明菜。中森明菜は2025年に還暦の年齢を迎え、当時からのファンも同世代で人生の違う局面を迎えています。中森明菜の新たなスタートを紅白で華々しく見せ、またそれを小泉今日子が祝うのにすごく意義があるし、同世代に勇気や励ましを与えることになると思います。 バブルを経験し、のちにバブルが崩壊し、失われた30年を必死に生き抜いてきた、私含むアラウンド還暦のみなさんが、新たな人生に向けて悶々としている中で、中森明菜紅白待望論が巻き起こるのは、中森明菜自身が新たな人生のプロトタイプを見せてくれることへの期待の声でもあると思うのです」 (AERA dot.編集部・太田裕子) ◎スージー鈴木/音楽評論家、ラジオDJ、作家。昭和歌謡から最新ヒット曲まで、幅広い領域で音楽性と時代性を考察する。近著に「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」(ブックマン社)のほか、「中森明菜の音楽1982-1991」(辰巳出版)「桑田佳祐論」(新潮社)「サザンオールスターズ1978-1985」(新潮社)「EPICソニーとその時代」(集英社)「平成Jポップと令和歌謡」(彩流社)、近著に「大人のブルーハーツ」(廣済堂出版)など著書多数。
太田裕子