「カメ止め」に続き「侍タイムスリッパー」も…上映作品が全国ヒットを連発 支配人が明かす「シネマ・ロサ」が“自主映画の聖地”と呼ばれる理由
池袋は映画館の街だった…
「シネマ・ロサ」における「侍~」上映は、公開初日から現在に至るまで、ずっと1日1~2回である(9月半ば現在)。 「よく、『なぜもっと上映回数を増やさないのか』といわれるのですが、映画の上映とは、かなり早い時期に配給会社さんから提案をいただくものなのです。そのため、上映期間や上映回数をきちんと決めたうえで、宣伝を始めます。当館も『侍~』だけを上映しているわけではありませんし、スクリーンも2つしかありません。上映期間や回数を、あとになって自在に動かすことは、むずかしいんです」 こういった、シネコンとはちがった姿勢が、映画ファンにとってはうれしい点なのだ。 「20年来、自主映画の上映に力を入れてきましたが、売り上げだけでいえば、決して大きなものではありません。それよりも、作り手が、当館をきっかけに注目を浴び、商業デビューして大手の作品を手がけている姿を見る――それこそが、我々の最大の喜びです」 実は、ロサ会館周辺を含む池袋西口一帯は、大規模な再開発が始まっている。今後、駅前には巨大なタワービルが何棟も立ち並び、回遊広場もできる予定だという。「シネマ・ロサ」が入っているロサ会館は、どうなるのだろうか。これについて、矢川支配人は「当館はあくまでロサ会館のテナントなので、今後のことは、うちではわかりません」という。 だが、地元商店街のある役員によると、 「たしかにロサ会館がどうなるかは、まだ正式には決まっていません。ただ、豊島区が2018年に公表した概要構想によると、ロサ会館のあたりも再開発の対象予定地域になっているんです。すでに地元では再開発のための準備組合も発足しています。そうでなくとも、もう開館から50年以上たっている古い建物ですから、いまのまま残ることは、ないと思います」 戦後80年の間に、池袋駅周辺では、のべ50館以上の映画館が、生まれては消えていった。まさしく“映画の街”だったのだ。それがいまではシネコンをのぞくと、「シネマ・ロサ」のほかは、「新文芸坐」と「シネ・リーブル池袋」「シネロマン池袋」しかない 。今後、再開発がどのような形になるかは不明だが、自主映画を愛する精神だけは、何らかの形で池袋に残ってほしいものである。 森重良太(もりしげ・りょうた) 1958年生まれ。週刊新潮記者を皮切りに、新潮社で42年間、編集者をつとめ、現在はフリー。音楽ライター・富樫鉄火としても活躍中。 デイリー新潮編集部
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