「将来のために」勉強する子どもが減少?保護者にできることは【専門家解説】
カギは社会問題への関心。低学年ではチャレンジングな経験を
将来の見通しが立てづらい中で、大人にはどのようなサポートができるのでしょうか。 カギとなるのは「社会問題への関心」を高めることです。 高校3年生を対象とした調査では、2020年以降のコロナ禍を体験した生徒は、それ以前と比べて「社会問題について真剣に考えた」という比率が大きく上昇しているというデータがあります(※1)。 これは、新型コロナウイルスの感染拡大が世界的な課題となる中で、高校生自身は、休校や学校行事の制限、進路選択の混乱などの影響を直接受けたことで、自分と社会をリアルに結び付けて考えることが増えたためだと考えられます。 さらに、この間に学校現場に広まりつつある「探究的な学習」も相まって、高校生にとって学びの中で社会問題を考えることは当たり前になりつつあります。これを機に、社会問題を通じて「自分はこういうことをしていきたい」という将来観を高めることが重要ではないかと考えています。 では、小・中学生のうちから「社会問題への関心」を高めるにはどうしたらいいのでしょうか。 特に、低学年では難しく感じられることもあるでしょう。 ヒントとなるのが「チャレンジングな経験」を持つことです。ベネッセ教育総合研究所の分析によると、小学4年生までに少し難しいチャレンジングな経験(好奇心・探索、果敢な挑戦、夢中・没頭、達成・自信、将来を考える、といった経験)をした子どもほど、高校卒業まで、社会への関心や将来の見通しを持っていることが明らかになっています(図3)。
少し難しいことに保護者のかたや先生、友達の助けを借りながら取り組むことは、子どもたちの視野を広げます。それが周りのこと、ひいては社会のことへの関心に少しずつつながっていくことでしょう。
保護者のかたの「ちょっとした問いかけ」がきっかけになる
「チャレンジングな経験」を持つといっても、ハードルの高いものをイメージしなくても大丈夫です。非日常の経験をさせることも効果的ですが、普段の生活にプラスαで取り組めることを意識するとよいですね。そのほうが経験の頻度を高めることにもつながります。 保護者のかたは、お子さまの学びや経験についての問いかけを意識してみてください。 たとえば、学校で行われている授業や講演会、夏休みの自由研究、自然や動物を見ての感想など、お子さまの活動に関心を持って「どんなことがわかったの? 教えてほしいな」と学びのアウトプットを促してみるとよいと思います。「なんでこうなるんだろう?」と一歩踏み込んで考えるきっかけが、お子さまの知的好奇心に火をつけるかもしれません。 また、テレビなどを見ながら、保護者のかたが当事者として感じた社会課題について話をしてあげるのも効果的です。保護者が体験したことであれば、お子さまも「自分には関係のない話題」とは思わずに、考えることができるのではないでしょうか。 予測が難しい社会の中で、将来どうなるかや、変化する職業を直接教えることは難しいものです。しかし、普段の生活を起点にチャレンジングな経験を促すことは、保護者のかただからこそできるサポートです。それにより、お子さまが将来の社会や生活を想像して、「将来のために学ぶ」という動機付けにつなげていけるとよいですね。