タクシーが主役の推理ドラマは結構リアル! 「前のクルマ追って」「とんでもない長距離」も本当にある話だった
ドラマ内の演出は意外とリアルでも発生する
また、「ドラマではよく『前のクルマを追ってください』というシーンがありますが……」と聞くと、「これもねえ、意外に多いんですよ。我われはお客さまの事情について深追いするのはタブー視されているので詳しい事情はあえて聞きませんが、探偵事務所などによる浮気などの素行調査などを行っていて『前のタクシーを追う』というケースが意外と多いようです」と話してくれた。日々の生活に疲れて運転士に相談事をしたり、人情話をしたいというだけでタクシーに乗る人も結構いるようである。 いまどきはキャッシュレス決済が多くなってきているが、これも劇中で『お釣りは結構です』といって降りるシーンもよくあるのだが……、「日本ではチップという文化はありませんが、これも『お釣りはいらない』というパターンで多いのですが、1回の乗務で意外なほどチップが貯まることもあった様子(いまではスマホの配車アプリでチップを払うかどうかのメニューが設定されている)。ちなみに、過去にたまに長距離利用していた筆者は、降りるときに「帰りにお茶でも飲んでください」と、コーヒー1杯程度のチップを渡すようにしていた。 いまでは4年制大学を卒業し、そのままタクシー運転士になるというパターンもあるようだが、それでも「異業種から転職する中高年」がタクシー運転士の経歴としてもっとも多い。転職してくる理由はさまざまであるものの、訳ありなケースも多く「タクシー業界は日本社会の縮図(事情通)」ともいわれている。寡黙な運転士の場合は無理に話しかけないが、話好きな運転士のタクシーに乗ったときには、業界事情を探りながら積極的に話すことを筆者は心がけている。 単なる「推理もの」というだけではなく、多くの人が慣れ親しむ公共交通機関であり、そこには意外なほどさまざまなドラマがタクシーに存在する。「タクシー運転士の推理もの」はそこがうまく合わさり人気シリーズとなっていったものと考えている。 ただ、最近はタクシー業界を舞台にしたドラマというものを見かけない。働き方改革や各種ハラスメント問題などもあり、タクシーだけではなく、職場を舞台にした「お仕事ものドラマ」は作りにくくなったとも耳に入っており、世知辛い世のなかになったなぁ……ともつぐづく感じている。
小林敦志