【#佐藤優のシン世界地図探索76】モスクワから広告が消えたことの意味
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source Intelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * 佐藤 モスクワの話をすると、まず、何が一番以前から変わったかというと、街から広告が無くなりました。 ――資本主義ではなくなったからですか? 佐藤 資本主義でなくなったわけではありません。広告が無くなった理由のひとつは景観です。街にはゴミひとつ落ちていません。さらに毎日、夜中に洗剤を使って清掃車が道路と歩道を磨いています。 ――ソ連末期のモスクワとは段違い!! 国としてのレベルが高くなった。 佐藤 そうです。モスクワだけではなく、サンクトペテルブルクも同じで広告がありません。広告が無くなった二番目の理由は、広告によって人を刺激して、人為的な消費を作り出す経済との決別です。 ――進化した資本主義、ではないのですか? 佐藤 そういえるかもしれません。それから無くなったのはスロットマシーン、博打に関連する店ですね。さらに風俗店もそうです。 ――無くなった理由は、それらが不必要だからですか? 佐藤 要するに、博打と風俗は「人為的に作られた欲望」だということです。 ――なるほど、納得です。 佐藤 それからポルノ雑誌もポルノビデオも無くなりました。 ――自分はモスクワでは生きていけません......。 佐藤 だから、「SEXは皆で大いにやればいいじゃないか。やりたいのになぜそんな人為的なビデオを見ているんだ? 変じゃないか?」ということです。 ――ものすごい変わりようです。 佐藤 そして、食品安全基準が厳しくなり、化学物質に対する規制がものすごく厳しくなっています。 ――PFAS(有機フッ素化合物)が無い?