いい人よりも強い人が尊重される競争至上主義の韓国、昔ばなしを読み聞かせても将来の役に立たないという教育ママも
■ 韓国の子育てで重要な3項目 昔から、韓国の偉人伝シリーズは様々で、古朝鮮を建国したとされる神話の主人公壇君から、ビルゲイツ、なぜか宮崎駿監督まで偉人伝として取り上げられていた。 偉人伝を読んで我が子も登場人物のような優秀な人材に育ってほしいと思う親心なのだろうが、韓国の競争社会を見ている筆者はなんとなく穿った見方をしてしまう。 そして、今年に入って大手出版社から発売された、低学年用のやさしい偉人伝シリーズには、次のような宣伝文句が書かれていた。 「過去5年間、教師生活をしながらもう無理だとあきらめていた子どもに偉人伝を読ませてみた。効果は100%だった。全部肯定的で積極的な思考回路を持つ子どもに変わった。違う本を読ませた時には現れない変化だった」 余りにも情報量が多すぎて、親も消化不良を起こしそうな韓国の教育事情である。 巷の噂によると、韓国の子育てで重要な3項目は、1.母親の情報力 2.父親の無関心 3.祖父母の資金力なのだそうだ。またやはり、穿った見方をせずにはいられない韓国の教育事情である。 このような教育問題は少子化の時代になっても、厳しさを増すばかりだ。 ソウルの有名大学に入学することが成功への第一歩で、その先も競争はまだまだ続く。そしてドロップアウトした若者の問題は深刻だ。 韓国の国会のどこかでいつも取り上げられているのは、自殺予防の問題で、この国の自殺率は10万人当たり25.2人で常にOECD加盟国でワースト1位だという話は新聞やニュースで頻繁に報道される。 文在寅前大統領は、選挙時に自殺率を半分に減らすと目標を大々的に掲げて当選したが、これといった結果を残すことはできなかった。この問題は、深掘りしていくと教育問題に直結するので簡単に解決できる問題ではない。
■ 現代の韓国人が日本に抱くイメージ 競争に疲れた最近の韓国の若者には日本の音楽やドラマが人気らしい。 「イマドキこんないい人ばかりが出るドラマがあるのか。見てるだけで癒やされるかも」と形容されている様子を見かける。 例えば、2年ほど前の「サイレント」というドラマが話題になった時がそうだった。あのいわゆるふわっとした感じが、殺伐とした韓国社会で揉まれている韓国人の若者にはヒーリングになっているようだ。 我が家の長男の着メロも「森の小さなレストラン」という曲で、現代の韓国人にとって日本は追いつけ追い越せの羨望の対象ではなく、自分たちが失った何かがまだ残されている国というイメージになっているようだ。 20年前「冬のソナタ」を筆頭とした第一次韓流ブームが来た時に、日本のおばさまたちは日本では見ることができなくなった懐かしさを求めて、ソウル観光に来ていた。 韓国よりも先に日本の方が少子高齢化問題が話題になり、その当時はいつか韓国も日本のようになるだろうという新聞記事が多く出ていた。しかしこの20年間で状況は逆転した。 この先は、韓国で起きていることが、いつか日本で起こるかもしれないと韓国を観察する時代が来るかもしれない。 立花 志音(たちばなしおん) 1977年生まれ 東洋英和女学院大学短期大学部キリスト教思想科卒業後、損保勤務を経てソウルに留学。2005年韓国で出会いの夫と結婚。現在2男1女を育てながら日本人が見る韓国をライターとして韓国内で活動中。
立花 志音