AERA編集部

都会か地方か いまの選択と価値観が、老後を決める

2015年12月28日(月)14時2分配信

こんな生活はもう嫌だ、と地方に移る。
便利な都会で生き残ろう、と決意する。
誰にとっても先が見えないこの時代、老後を少しでも豊かにするために私たちはどうすればよいのか。
『下流老人』の藤田孝典さん、地方移住したブロガーのイケダハヤトさん、経済エッセイストの井戸美枝さんに聞いた。
(Yahoo!ニュース・AERA編集部)

※[映像]東京から地方に移住した歯科医師と映像ディレクター

貧困率4割の時代 「受援力」で生き抜く

2015年の新語・流行語大賞にノミネートされた「下流老人」。私の定義は「生活保護基準相当で暮らす高齢者、その恐れがある高齢者」です。NPOで生活困窮者の支援に取り組んでいると、相談に来る人のほとんどが「働けなくなるとは思わなかった」「こんなに年金が低いとは」「病気をするとは思わなかった」と言い、社会の大きな変化に戸惑っています。予想しろというほうが酷なんです。

写真:アフロ

高齢化は急速に進んでいます。統計上の所得の中央値の半分に満たない額で暮らす「相対的貧困」は国内の全高齢者のうち22%。700万人に達しています。一人暮らしの高齢者に絞ると、男性の38%、女性は52%が相対的貧困に陥っています。預貯金や年金が減り、政府の貧困対策が進まない現状が続けば、将来的には1000万人規模に膨れ上がると予想されます。

現在は労働者の4割が非正規雇用です。夫の年金で暮らしていける専業主婦を除き、多くの人たちは将来、無年金か低年金の「下流老人」になるでしょう。さらに、病気やリストラなどの突発的なリスクによって中間層から下流へ転落する人も。今の30~40代が老後を迎えるときには、少なくとも相対的貧困は40%にのぼるはずです。現役世代も他人事ではいられないのです。

特に都会では「住宅費の高さ」が最大のリスクになります。電車やバスなどのインフラが整備された都会は、本来は高齢になるほど住みやすい場所のはずですが、世界の都市の中でも東京の家賃は高額です。しかも日本は公営住宅が少なく、生活困窮者でも公営住宅に住めないという異常な状態。いったん転落すると家を失い、再就職するのも生活の立て直しも至難の業という悪循環に陥ってしまいます。

最善の方法は「下流予防」です。まず個人でできるのは、老後の生活を年金だけに頼らないこと。予想される年金額を調べ、少なければ貯蓄をし、なるべく早く暮らしをダウンサイジングしておく。病気や介護も想定されます。老後は予想以上に資金が必要だと考えて、現役時代の半分の収入で生活できるように準備しておいたほうがいい。家族や友人、地域やNPOとつながりを持ち、困ったときに相談したり助けてもらったりできるよう「受援力」を高めておくことも必要です。

写真:AERA編集部

ふじた・たかのり/1982年生まれ。特定非営利活動法人ほっとプラス代表理事。ソーシャルワーカーとして現場で活動する。著書に『下流老人』

生活コスト半減 地方移住は下見がカギ

イケダハヤトさん(プロブロガー)

2014年に東京から高知県に移住しました。僕のブログには「田舎暮らしをなめんな」という親切なおじさまからの書き込みが多いですが、今の田舎は昔とは全く違います。地域活性化に期待して“移住者ウェルカムモード”全開です。僕の娘なんて地域のアイドルですよ。

写真:AERA編集部

ただ、引っ越す前には入念な下見を。「のんびりしたい定年退職後の夫婦」VS「地域活性化に貢献してほしい地元の人」という構図はありがちです。会社選びと一緒で、自分に合った場所を選ぶことが大事です。移住促進のイベントに参加して、その地域の“人”を知ってから移住すれば、失敗は少ないはず。いきなり田舎暮らしをするのではなく、まずは地方都市で様子を見る「ニ段階移住」をおすすめします。僕は今、山里の小さな集落に住んでいますが、はじめは高知市内で1年間暮らすことで、海沿い、山あい、集落によって文化が違うということが理解できました。

写真:AERA編集部

仕事の価値観も都会とは変えたほうがいいですね。地方都市はフルタイム正社員でも手取りが月額10万円を切ることも多いのが現実です。一つの雇用先に勤めるサラリーマンではなく、小さな仕事を自分で集めてください。例えば、農業で5万円、林業で3万円、飲食業で3万円、というイメージ。でも、そんな地方だからこそ起業のチャンスがたくさんあります。少子高齢化、過疎化、雇用、空き家、医療など社会問題がすごく身近にあって、課題を解決しようとすることがビジネスにつながるんです。

“都落ち”はもはや死語。僕の場合、東京に住んでいた頃と比べて生活コストは半減、年商は3倍の2000万円になりました。“地方”というコンテンツが新たに加わったことで、仕事もブログ読者の幅も広がったからです。東京より田舎のほうが創造性が高まるのに、大半の人がそれに気づいていません。娘と過ごす時間も増えて、家族関係もよくなって、ホント最高ですよ。特色のある教育をしている地方の公立小中学校もありますし、親のために家を建てて介護移住もいいでしょう。

ダウンサイジングをして浮いた時間とお金で何をやるか? 野望は膨らむばかりです(笑)。年収1000万円でタワマンをローンで買って……そんな小さな夢でいいんですか? まだ東京で消耗してるの?

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いけだ・はやと/1986年生まれ。東京でソーシャルメディアコンサル事業を立ち上げた後、フリーライターに転向。2014年6月から高知県に移住し、ブログで地域情報を発信している。著書に『年収150万円で僕らは自由に生きていく』など

中流より上の安心感 備えなき老後は危険

井戸美枝さん(経済エッセイスト)

さまざまな家庭のライフプランニング相談を受ける中で、中流から上流のアッパー層こそ「マネーリテラシー」が低い人が多いと感じます。今の「ステイタス」があれば老後も安泰だという妙な安心感があるからです。ですが、将来の貧困リスクは、アッパー層にももちろんあります。

写真:AERA編集部

【リスク①共働き】実は、共働きで財布を分けている家庭ほど貯蓄できていません。住宅ローンや保険料などの固定費は分担していても、食費・交際費などのいわゆる変動費は各自が自由に使っているからです。でも、老後もそれを続けられますか? 隠れ借金・ギャンブルによる浪費などトラブルに発展することもあるので、まずは家計を把握して、貯蓄目標を決めましょう。

【リスク②子どもの教育投資】年収や子どもの年齢でも異なりますが、支出内訳の目安は、住宅ローン25%、生命保険10%、生活費(食費・光熱水費・通信費・雑費など)35%、貯蓄20%です。原則として教育投資は10%に抑えること。少なくとも高校まではこのスタンスを守らないと、貯蓄を削って教育投資をすることで老後資金を貯められず、将来、子どもが親を養うために貧困に陥るという本末転倒な結果となってしまいます。

【リスク③マイホーム・介護】自宅を購入するときにまず考えるべきは、自分や配偶者に介護が必要になったら、そこを終の住処にできるか?ということです。環境は良くても車の運転が必要な郊外の一戸建てか、交通アクセスの良い都心のタワーマンションか。誰にどのような介護をしてもらいたいかを想定して検討しましょう。都会のメリットは、お金さえあればサービスが充実した介護施設を選べることですが、看取りまでしてもらえる有料老人ホームに入りたいなら、3000万〜4000万円は用意しておかなければいけません。いったん上げた生活レベルを老後に落とすのは難しいと肝に銘じておきましょう。

定年や年金受給開始年齢が引き上げられているように、時代は大きく変わっています。職場の先輩が老後をエンジョイしているのを見て安心したり、裕福な家庭に育って養われた金銭感覚をそのまま受け継いでいたりする人は要注意です。今の年収やキャリアに安心せず、ライフプランニングを見つめ直してください。

写真:AERA編集部

いど・みえ/社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー、キャリアカウンセラー。関西と東京を拠点に、個人の相談から企業のマネープラン講習まで幅広く活動。『知ってトクする! 年金の疑問71』など著書多数




Yahoo!ニュースと週刊誌AERA(朝日新聞出版)は共同企画「みんなのリアル~1億人総検証」を始めました。身近なニュースや社会現象について、AERA編集部の取材による記事に動画を組み合わせてわかりやすく伝え、読者のみなさんとともに考えます。今回のテーマは「都会で老いるコストとリスク」。Facebookやメールではご意見や感想を募集中です。AERA編集部から取材のお願いでご連絡させていただく場合があります。

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