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私達の集落、私達の島。徳之島にようこそ! ―― 情熱の島のおもてなし

提供:奄美群島広域事務組合

最終更新:

集落から発信 徳之島の魅力

徳之島は、奄美群島のほぼ中央にある離島の1つ。徳之島・伊仙・天城の3町で構成される。人口は約22,600人。
「子宝の島」として知られ、合計特殊出生率が高い。400年以上続く「闘牛の島」としても知られる。年間20回以上の大会が開催され、指笛や歓声が鳴り止まない闘牛場のスタンドは、「情熱の島」そのものだ。
固有の生物が多種棲息することから「東洋のガラパゴス」と称され、世界自然遺産登録を目指している。豊かな自然に見せられた来島者も多く、2019年は8万7311人を記録した。
徳之島の魅力、集落の魅力を発信する人々の姿をレポートしたい。

集落全てが国立公園 魅力を発信「金見あまちゃんクラブ」

金見崎展望台からは太平洋と東シナ海が同時に望める

徳之島の北東部に突き出た金見集落は、世帯数約40の小さな集落だ。金見崎とソテツのトンネルが有名な景勝地でもある。

森には国指定特別記念物のアマミノクロウサギが生息する。白く輝く砂浜には、無数のオカヤドカリ、ウミガメが産卵にやってくる。透明度の高い海に、美しい珊瑚礁が映える。メランジ堆積物と呼ばれる、古代~中生代の古い岩石が海岸の風景にアクセントを加えている。

集落全てが国立公園。金見集落は、観光地でもあり、生活の場でもある。狭い通路の集落内に、大型の観光バスが入ることは不可能。一度に多くの人を受入れるドライブインや土産店もない。

「生まれ育った金見集落の魅力を見直し、多くの人に伝えよう」と立ち上がった人がいる。元田浩三さん(66)だ。役場を退職後、奄美群島認定エコツアーガイドとして、地域でのガイド活動や高齢者の活動をサポートしていた。
2018年、一般社団法人金見あまちゃんクラブを設立。「あまちゃん」とは徳之島の言葉で「お母さん」の意味。女性のパワーが集落の発展には欠かせないと考えたのだ。

「とうぐら」は島の方言で、ダイニングキッチン。家族で囲む食卓のような温かさを名前に込めた。

まず、2019年5月に国の農山漁村振興交付金を活用して「ジビエカフェ・とうぐら」をオープンさせた。カフェのメイン料理は徳之島のイノシシを使った料理。
鮮度の良いシシ肉は、ハンバーグやカツレツ、カレーや炒め物などに調理されている。

集落で高校1年生と中学2年生の娘を育てながら、カフェの店長を務める元田ミユキさん(39)は「週末は満席が続き、お待ちいただくこともあります。店の窓に広がる、太平洋と金見海岸の風景に歓声を上げる人も多い」と話す。元山洋子さん(73)は「島の味を基本に、味の足し算と引き算を繰り返してメニューを作りました」と語り、元田なほ子さん(61)は「色々な方と交流することで学ぶことも多い。「おいしかったよ」の一言が励みになります」と胸を張った。

イノシシの肉を使った「あまちゃん定食」。落花生入りのご飯や地鶏出汁の味噌汁は島の味。

ありのままを伝えたい。

「ガイドに求められるのは、幅広い正確な知識。貪欲に学ぶ姿勢が欠かせません。集落の歴史には、先人の知恵が込められています」と話す元田代表理事。

「金見あまちゃんクラブは、金見集落の美しい世界から「見る」「遊ぶ」「食べる」をコンセプトに掲げて活動を始めました。正確なガイド、安全にも配慮したアクティビティ、島の味を通して、金見の魅力を伝えたい。ありのままを伝えたい。金見に着いたら、気軽に声をかけて欲しい。集落の魅力をお伝えします」と元田代表理事は呼びかける。

樹齢300~400年のソテツが作ったトンネル。「ハブに注意」の看板が掲げられており、道の中心を歩くのが決まり。

行政も積極的に活動をサポートしている。徳之島町役場北部振興対策室の瀬川均指導監(61)は「透明度の高いエメラルドグリーンに輝く金見集落の海岸は、かけがえのない財産。車が離合できないほど狭い道が続く集落の坂を下ってこそたどり着ける場所。島の暮らしの中で流れる、ゆっくりとした時間を過ごして欲しい。金見崎海岸には、利便性を高めるためにトイレとシャワーを整備中。観光振興と町民生活の両立を目指したい」と語る。

東シナ海側はウミガメの産卵場所。灯台脇の険しい坂を下るため、節度を持った行動が求められる。

過疎の集落は、プライベート感満載。

きれいな環境で子育てがしたいとIターンした川口さん。安心・安全なアクティビティを目指している。

アクティビティの開発を続けているのは、家族6人で熊本市からIターンした川口明さん(44)。徳之島町地域おこし協力隊として、体験型環境教育活動にも手腕を発揮している。

「色とりどりのサンゴや熱帯魚が泳ぎ回る徳之島の海。リーフの外は流れが速く、波も荒い。リーフ内を中心に、SUPやシーカヤック、水中スクーターなどのサービスを提供しています。山道をマウンテンバイクで走れば、固有種が生息する森の魅力を肌で感じることもできます。あらゆる世代が安心して楽しめるアクティビティを提供したい」と環境と安全の両立を目標に掲げる。

元田代表理事は「金見集落は集落全てが国立公園。住民と来訪者が手を取り合って、この豊かな自然と文化を次世代に引き継ぎたい。私たちの願いです。過疎の集落は、プライベート感も満載。集落の魅力が集落へのUターンやIターンなどの移住・定住につながったら」と活動を通じた集落の活性に夢を託す。

集落名のバス停に込めた地域への思い 南恵会・徳之島総合陸運・大船文具店

徳之島のバス輸送を担っている徳之島総合陸運。1953年の創業当時から変わらないボディーカラー。

徳之島総合陸運は、徳之島で唯一のバス会社だ。行政から委託を受けたコミュニティバスを組み合わせた8系統が、島内全ての集落をつないでいる。

自家用車が普及した今でも、バスは通学や高齢者の買い物には欠かせない"島の足"。最近では、"バス旅"を楽しむ観光客も増えてきた。島内のバス停をデザインした缶バッジが「徳之島ファン」「バス愛好家」の人気を集めている。

地元の誇りをバス停に託して。「介護福祉士ラッパー」が缶バッジ製作に挑む。

「島内外から、バス停の思い出が数多く寄せられました」と語る嶺さん。

缶バッジを発案したのは、社会福祉法人南恵会の嶺和寿相談員(36)だ。プライベートではラップ歌手MINESTAとしても活動する嶺さん。徳之島を題材にした楽曲を発表し続けている。

「ラップの表現で「レぺゼ」や「レペゼン」といった言葉があります。英語のrepresentative(レプレゼンタティブ)を短縮したもの。「代表者」や「代理人」といった意味。島を代表するものと言えば、美しい海や山の自然。しかし、私は人間をテーマにした歌を作りたかった。島を離れる若者や、帰省する機会の少ない出身者に、徳之島出身であること思い出して欲しい。徳之島を誇りに思って欲しいと考えている中で、バスが頭に浮かびました。バスに乗ってアイデアを練ることにしました」

完成した缶バッジ。キーホルダーに加工されたものもある。

「頭をガツーンと殴られた感じでした。通学の時に見えていた風景とは全く異なる風景に心が揺れました。買い物に使う高齢者には、運転手が荷物の上げ下ろしを手伝ってあげている。地元の利用者が、観光客に車内でガイドをしている。車内に集落の停留所名がアナウンスされる度に、温かい気持ちが胸を打ち続けました」嶺さんはバス停の缶バッジを作ろうと決めた。

「事業所では授産品生産の一環として缶バッジを作っており、機材は揃っていました。利用者のみなさんは、島中の集落からやってきます。利用者にも、缶バッジを買った方にも喜んでもらえる予感が走りました」
嶺さんは、車内で動画を撮影。事業所内でのプレゼンテーションを終えると、徳之島総合陸運の本社に向かった。

「島のためなら」と即決。集落の魅力は路地にあり。

「島のためなら」とバス亭の缶バッジ製作を即決した前田社長。「バス停の先にある集落の路地が島の魅力」。

「申し出があった時には、即決しました」と当時を振り返るのは、徳之島総合陸運の前田清仁社長(57)だ。
「島を盛り上げたいという気持ちは、私も同じでした。南恵会の事業所を利用されている方々がバッジを作り、収益が社会福祉の一助となる。バス停を利用される方や、過去に利用されていた方への思い出にもなる。進学や就職で島を離れた人が、古里を思い出すきっかけにもなってくれる」とバス停を契機に広がる思いを語り「バス停の先にある集落の路地にこそ、島の魅力があると思っています。闘牛のために育てている牛を散歩させる姿は、徳之島ならでは」と笑顔を見せた。

近隣住民も気軽に立ち寄れる「徳之島しごと・くらしサポートセンター」。白山福栄さん(87)も缶バッジ製作をサポートするメンバーだ。

熱意のバトンは島の文具店へ。

大船文具店に設けられているバス停・古里コーナー。観光客にミニ観光講座を行う店主の川さんとスタッフの鮫島さん。(右から)

島の中心部、亀津地区で文具店を営んでいるのは、川幸代さん(55)。店内では文房具や画材の他、福祉団体や学生が製作した小物類も積極的に取り扱う。

「嶺さんの熱意、南恵会の地域福祉に取り組む姿勢に心を打たれ、取り扱いを決めました。バス停というアイデアも良かった。店内には特設コーナーを設置。読み方が難しい集落名もあるのですが、ローマ字表記もあるので戸惑いもありません。観光客、帰省した出身者はもとより、地元の方に支持されているのが嬉しい」と笑顔で語った。

特別支援学校の生徒が作る小物類も積極的に取り扱う店内。納品に来た生徒が「自分の好きな集落」を発表。掲げられたのは、闘牛場がある「松原」と景勝地「金見」のバス停。

バス停の名前が記された缶バッジが、島の集落を表すアイコンとして走り始めた。

川さんは隣町の伊仙町に出店した2号店でも缶バッジを販売している。「伊仙町は、合計特殊出生率が2008~2012年で2.81と全国トップ。徳之島町は5位。天城町は10位。島には子どもの笑い声があります。子は宝といった考え方が、家族や親族だけでなく近隣住民など集落全体にあります。助け合う心=結の精神のもとに、強いつながりが子育ての安心感にもつながっているのかもしれません」。

2020年2月に東京・代々木公園で行われた徳之島フェアに出店。在京の徳之島出身者が外国人旅行者に出身集落を説明する場面も。

世界自然遺産登録をめざしている徳之島。豊かな自然を守っている人々がいる。集落の歴史を守り育ててきた人々がいる。古里への誇りが、来訪者の胸を打つ。「ありのまま」を伝え続ける島人の情熱は、時代を超えて未来へと続く。